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タワマン〜墜ちた女達〜
第5章 狩野の日常
「電報堂です。一応、そこで企画営業してました。」

「ああ、やっぱり…。電報堂の社員さんが話してたのを思い出したわ…。1人の社員を連れて来ると私に会えないから、2度と連れて来ないって…。それが狩野さんだったのね…。」

「そういうことになりますね…。」

狩野は思わず苦笑いする。1流の広告代理店でバリバリやっていた時が懐かしい。あの業界では接待やらも非常に大切なファクターになり得るので、風花に会えない狩野は本気で上司に嫌がられたものだ。

「なるほど…。あそこのNo.1ホステスともなればここに住めるのも納得です。」

狩野はその点にも合点がいった。会議の時に夜の店の女性だと感じたが、No.1キャバクラ嬢でもなかなかこのマンションに手を出すのは厳しいであろうが、超有名店のNo.1ホステスである風花なら可能なのだろう。

「ああ、それは違いますよ。ここは私のパパ…。本当の父ね…。父が買ってくれたの…。父はそれこそ電報堂のライバル、博通の社長よ…?」

「博通の…。そうだったんですね…。でも、あの店は電報堂が…。」

「そうね。電報堂さんにご贔屓にしていただいてるわね。まぁ、私が博通の娘ってことは秘密にしてるし。私も父と仕事の話しないからスパイしてるわけでもないのよ?」

「いや、そういう意味では…。しかし、そんな秘密言っていいんですか?」

「ん?まぁ、ご近所さんだからね。それにもう辞めたんでしょ?なら、関係ないわ。」

「まあ、私も会社に戻る気持ちはないですが…。」

「なら、大丈夫ね。でも、狩野さん、機会があったらお店に来てね?今日会えたし、お店でも今度はちゃんと会えるでしょうから。」

いたずらっぽくウィンクしてくる。会議の時は気が強そうというイメージしかなかったが、ころころと雰囲気が変わる人だなと、狩野は思う。それこそお店でいろんな客に合わせるために身に着けたものなのだろう。実際に話してみると、自然と緊張せずに話せてしまう。風花の雰囲気がそうさせるのだろう。

「そうですね…。近い内に…。会社で仲良かった奴でも連れて行こうかな。」

「ここに住まわれてるなら、ウチも余裕でしょうし。良かったわ、会えて。新規のお客様も少ないから、お誘いしようと、用意していたのよ。」

「ああ、なるほど。」

風花の言葉にトレーニングルームで名刺がスムーズに出てきた理由がわかる。
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