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第8章 CLUBCheek

どうやら、酔った客がしつこくホステスにからんでいるようだ。男がホステスを抱き寄せ、身体に触っている様子が見える。その時…。

「「あっ…。」」

狩野と慎吾が同時に声を上げる。酔った男の横顔が見えたのだ。

「あいつ…。あいつ、まだいるのか…？」

狩野が慎吾に問う。慎吾は狩野の問いに苦々しく頷く。

「お知り合い？ああ…。同じ会社だから…。」

楓華が関係を問おうとして、途中で気づく。狩野、村木と酔った男は同じ電報堂の社員である。狩野と村木の一つ下。仕事はできるが、酒癖がとにかく悪いのだ。

「どうします？助けに入りましょうか？」

慎吾が楓華に尋ねる。狩野は酔った男から目を離さない。

「嬉しいですけど、あまり大事には…。」

楓華も返事に戸惑う。基本的に客同士のいざこざはマズい。ただ同じ会社の人間ということで、楓華も返事に窮する。

見てると、からまれているホステスも上手くなだめ、かわそうとしているが、とにかく男がしつこい。狩野と慎吾が立ち上がる。狩野は手で慎吾を制す。

「俺が行こう。あいつには貸しがある。それに俺は辞めたからしがらみがないし。」

慎吾は頷いて席に座り直す。狩野はその時はすでに酔った男に向かって歩き始めていた。男の近くまで行き、声をかける。

「田所…。久しぶりだな…。」

狩野は男の肩に手を置き、声をかける。

「あんっ？誰…あっ…！か、狩野…さん。」

田所の顔がサッと青くなる。

「調子良さそうだな…田所？でも、出来ればもっと静かにしてくれると助かるな。ほらっ、周りも困ってるぞ？」

狩野は田所とホステスを引き離すように、田所の肩に力を入れる。

「あっ…、はい。すみません。」

田所は素直に謝る。狩野は一応、念押ししておく。

「会社辞めたけど、一応、お前には貸しがあったよな？あれ、チャラにするから、大人しくするなり、帰るなりしてくれるか…？」

「あ…あぁ…。わ、わかりました。す、すぐ帰りますんで…。さ、咲希ちゃん…ごめんね…。」

田所は慌てて財布を出す。ドタバタと会計を済ませ出ていく。その時には狩野は楓華達の席に戻っていた。

「ありがとうございます。助かりました。」

楓華と恵里菜は立ち上がって頭を下げてくる。

「いや…、大した事じゃ…。」

「村木さんもありがとうございます。すぐに助けに入ろうとしていただいて…。」