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タワマン〜墜ちた女達〜
第2章 引っ越し〜住民会議
「いえ…。わ、私…1人で大丈夫です…。どうぞ…先に帰られてください…。」

狩野の言葉にビクッと肩を震わせ、おどおどしながら晴香は小さな声で言う。

「こういうのは何人かでやったほうが早いですし。というか、これはコンシェルジュがやってくれないんですか?」

わざわざ狩野をここまで案内したコンシェルジュであれば、片付けもやってくれるのでは、と狩野は不思議に思う。

「こ、この会議の片付けは…下の階の人間がやる…って決まっているので…。ですから…狩野さんも…大丈夫ですから…。」

晴香が申し訳ないという感じと、上の階の手を煩わせる恐怖とが混ざった表情で答える。

「なるほど…。そういうことですか…。でも、まあ、私も新しく入ったばかりですし、手伝いますよ。」

せっかく人妻であろうが、きれいな女性と一緒にいられるのだ。狩野はこの機会を逃さず、そのまま手伝う。

「ありがとうございます…。」

狩野の様子に説得を諦め、晴香がお礼を言う。美夜や萌衣などの圧倒的な美人ではないが、晴香も十分な美人である。狩野は落ち着いた雰囲気や服などから30代前半と予想したが、少し熟れた感じが余計に欲情を唆る。

「か、狩野さん、気をつけてくださいね…。ここは上下の関係が厳しいですから…。私なんかを手伝うと、あまりいい顔されませんよ…。」

晴香が狩野に苦言を伝えてくる。狩野はその言葉に疑問に思っていたことを口にする。

「確かに厳しそうでしたが、何でなんですか…?同じ住民。基本は対等のはずでしょう?そこまで…。」

「ご存知ないのですね…。例えば柊さんは全国的にも有名な会社の取締役の奥様です。そして、私の主人はそこの課長をしています…。蒲田さんも大手企業の奥様で、私の主人の会社の取引先でもあります。湯中さんは老舗の奥様。椎名さんは有名広告代理店社長の御令嬢でもあります。ですから…ここに住んでる人達は関係がかなり強いのです。」

一気に説明する晴香。その説明で納得する狩野。なるほど…。このタワマンは旦那達の職場の関係がそのまま持ち込まれ、女性達が下手すると、旦那の職場での立場が悪くなる…。そういう関係なのだ。浅ましいなと思うが、狩野がそう思えるのはタワマンに一人暮らしができるほどの金の余裕があることと、若さゆえであろう。狩野がどこかで働いていたら、そうは言ってられなかったかもしれないのである。
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