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放課後のマドンナ
第1章 転校生
ガラガラ…
担任の保坂恭子が教室の引戸を開けると
生徒たちが一斉にこちらを注目した。
「えっと…転校生を紹介します」
熱いまなざしが淳一に注がれた。
「東京からこの学校に編入してこられた
大津淳一くんです」
さあ、挨拶をなさい
保坂先生に促されて
淳一は教壇の真ん中に立たされた。
「えっと…大津淳一です
よろしくお願いします」
挨拶をすると「標準語だべ!」と
誰かが囃し立てた。
「静かに!
えっと…淳一くんの席は…」
すかさず一人の女子生徒が
隣の男子生徒に向かって
「おめさあ、後ろの席さ行げじゃ」と言った。
「なすて?こごはわの席だぞ」
「そうね、クラス委員の小百合さんの隣の方が
なにかと教えて貰えるわね」
保坂先生さえも、
クラス委員の小百合さんとやらの
隣の席がいいと言い出した。
「ほら、せんせもそうしゃべっちゅんだはんで
すかすかど後ろの席さ行げじゃ」
「くそっ!大津覚えでろよ!」
そう言って荷物をまとめて、
その男子生徒は後ろの席に向かった。
何がなんだか聞き取りにくかったけれど
とにかくさっきの男子生徒に
恨みを買ったことだけはわかった。
保坂先生に促されて
空席になった男子生徒がいた席に腰をおろした。
「はじめまして、
私、クラス委員の岡 小百合です」
隣の女子生徒はにっこり笑って
淳一を迎え入れた。
「気取って標準語なんて話すんでねじゃ」
後ろに追いやられた男子生徒が
忌々しげに小百合にヤジを飛ばした。