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放課後のマドンナ
第1章 転校生
昼休みになると
小百合が「校内を案内して上げる」と
ガイドを申し出てくれた。
廊下で行き違う女生徒は
詰め襟ではないブレザーの制服が珍しいのか
淳一を羨望のまなざしで見つめた。
「校舎のトイレは全て女子用なの
男子トイレは校庭の片隅に一ヶ所だけあるから
そこまで行って頂戴ね」
元々は女子校だったせいか
男子生徒には不便なようだ。
クラスの男女比率も8対2の割合で
圧倒的に女子が多い。
「さ、次は体育館よ」
こっちよ、と
小百合はさりげなく淳一の手を握った。
手を離したくても小百合が強く握っているので
振りほどけない。
そうなると行き交う女生徒のまなざしが
羨望から嫉妬の色に変わってゆくのを
淳一は気づいた。
体育館には仕舞い忘れたドッジボールが一つ
コートに転がっていた。
「ね、キャッチボールしよ」
そう言って淳一の都合も聞かずに
ボールを投げてきた。
しかもキャッチしにくいボールばかり投げてくる。
考えようによっては、
こちらの運動神経を試されているみたいだが
実際は、小百合自身が運痴なのだと理解した。
「ねえ、淳一は彼女っているの?」
おいおい、呼び捨てかよ
図々しい女めと思いながらも
「彼女?そんなものはいないよ」と答えた。
「良かった~」
満面の笑みで彼女が投げたボールが
淳一のはるか上を飛んでいった。