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 縄師-Ⅳ ちづるとみひろ
第2章  非日常
 放課後、ミヒロ先輩が指を上に向けて、屋上の合図をした。

 隠れるのは私達を狙って待ち構えている男子生徒達からでもある。

 階段室の秘密の屋根にあがり、どちらからともなく抱き合って私達はキスをした。

 リョウのように感じさせるためでもなく、次のための下準備のようなキスでもない。
 
 ほんとうにただ唇を合わせるだけのキス。
 
「先輩は彼ともここでキスをしたの?」
 
「うん」
「それから?」
「わたし、ここで裸にされたんだ」
 悲しそうでも嬉しそうでも恥ずかしそうでもなくそう言った。

「エッチは?」わたしは重ねて訊く。
「それがしてないの。私の身体を目に焼き付けて卒業していくって、帰ってった。訳わかんないでしょ」

「そうなんだ。先輩可哀想」

「何でもないわよ、あんな奴。それより私、ここで裸で寝転んでいて、太陽とか空に抱かれてエッチしたみたいな気がして凄く感じることができた。だからちづ。あなたにも私を見せてあげる」

 先輩が服を脱いだ。

 4畳半ぐらいの四角い屋根のほぼ中央に、両手両足を広げて、全裸になった先輩が仰向けに寝た。

「ちづも」
 先輩の声に誘われて、私も着ていたものを全部脱ぎ、両手を広げて太陽に向かった。

 風が、私の全身にまとわりついて流れた。

 五月が終わろうとしている日の午後4時。
 学校の校舎の屋上の、もう一つ高い屋根の上で、全裸になった先輩と私は、太陽と風の自然に犯された。

 先輩はあおむけに、私はうつぶせに寝た。

 今まで感じたことのない太陽の温かみを背中に感じる。
 微熱を帯びた皮膚の上を風が吹き熱を奪い去る。

 その気持ちよさにおもわずゾクっと身震いをした。

「ちづ……」
 先輩が私を呼んだ。

 わたしは先輩の裸体の上に私を重ねる。
 唇の上に唇を重ね、舌を差し込んだ。

 足の間に膝を入れ、身体をずらして私も先輩の膝を受け入れる。
 お互いに圧をかけ、喘ぎ声もださず、ただそれだけで私達は達した。

「先輩。私が先輩の側ってどういうことですか」

「ああ。私もね、初体験の時は縛られて犯されたいって思ってるの。だから同じでしょ」




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