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縄師-Ⅳ ちづるとみひろ
第2章 非日常

土曜の朝は雨だった。
目覚ましの音で私とリョウは飛び起き、ベッドのシーツを張り替えてリョウの痕跡を消し去った。
続いて洗顔、食事といつものルーチンをこなす中、車寄せのチャイムがみひろ先輩の来訪を告げて、非日常の始まりだ。
リョウは自室に飛び込み、私は蛇の目傘を持ってお出迎えに走る。
「お早うございます。いつも先輩にお世話になっている後輩の田村千鶴と申します。今後とも宜しくお願いします」
と、先ずは車の中のご両親に好感度百パーセントの笑顔でご挨拶。
「生憎両親は仕事で出ておりますが、宜しくと申しておりました」
これで今後、私の名前は先輩の家庭に於いて、絶対的な『善』として君臨する。
「遅れるよ。早く行って」
先輩は、車から降りて挨拶しようとする両親を煙たがり、追い払うように手を振る。
元々今日は3人で何かのイベントに出かける予定だったということは聞いていた。
娘との外出を楽しみにしていた両親にとって、私は敵視すべき存在だった筈だ。
だが少なくとも、すみれ色のブラウスにマキシサイズのプリーツスカートで清楚系にした私を見た父親は、娘を横取りした相手として相応しいと判断したようだ。
「こちらこそ娘の友達になって頂き有り難う。一度お目に掛かりたいとお父様、お母様に伝えて下さいね」
満面の笑顔でそう言って、みひろの両親が去った。
取り敢えずリビングで、ティーカップにいれたお抹茶で乾杯した。
「ちづ。さっきなんで和傘なのって不思議に思ったんだけど、家のお仕事とは関係があるの?」
「みひろは私達が普通に使ってる傘、昔はコウモリ傘っていってたの知ってる?」
「初めて聞いた」
「うん。そのコウモリ傘が普通になると和傘が売れなくなってね、父方の質屋に大量に持ち込まれてたの。それが凄い高値で売れるようになったものだから、手入れも兼ねて家中和傘」
「お洒落だものね。そうか質屋さんだったんだ」
「そう。だから蔵の中には古い道具がいっぱいあって、なかには昔の拷問道具とかまであるの。みひろの霊感とシンクロするんじゃないかな」
目覚ましの音で私とリョウは飛び起き、ベッドのシーツを張り替えてリョウの痕跡を消し去った。
続いて洗顔、食事といつものルーチンをこなす中、車寄せのチャイムがみひろ先輩の来訪を告げて、非日常の始まりだ。
リョウは自室に飛び込み、私は蛇の目傘を持ってお出迎えに走る。
「お早うございます。いつも先輩にお世話になっている後輩の田村千鶴と申します。今後とも宜しくお願いします」
と、先ずは車の中のご両親に好感度百パーセントの笑顔でご挨拶。
「生憎両親は仕事で出ておりますが、宜しくと申しておりました」
これで今後、私の名前は先輩の家庭に於いて、絶対的な『善』として君臨する。
「遅れるよ。早く行って」
先輩は、車から降りて挨拶しようとする両親を煙たがり、追い払うように手を振る。
元々今日は3人で何かのイベントに出かける予定だったということは聞いていた。
娘との外出を楽しみにしていた両親にとって、私は敵視すべき存在だった筈だ。
だが少なくとも、すみれ色のブラウスにマキシサイズのプリーツスカートで清楚系にした私を見た父親は、娘を横取りした相手として相応しいと判断したようだ。
「こちらこそ娘の友達になって頂き有り難う。一度お目に掛かりたいとお父様、お母様に伝えて下さいね」
満面の笑顔でそう言って、みひろの両親が去った。
取り敢えずリビングで、ティーカップにいれたお抹茶で乾杯した。
「ちづ。さっきなんで和傘なのって不思議に思ったんだけど、家のお仕事とは関係があるの?」
「みひろは私達が普通に使ってる傘、昔はコウモリ傘っていってたの知ってる?」
「初めて聞いた」
「うん。そのコウモリ傘が普通になると和傘が売れなくなってね、父方の質屋に大量に持ち込まれてたの。それが凄い高値で売れるようになったものだから、手入れも兼ねて家中和傘」
「お洒落だものね。そうか質屋さんだったんだ」
「そう。だから蔵の中には古い道具がいっぱいあって、なかには昔の拷問道具とかまであるの。みひろの霊感とシンクロするんじゃないかな」

