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愛とは違う
第2章 素直に言えば?
キルアは足が速い。
電気の速さで動けるって言うんだけど、俺にはよくわかんない。
光ったと思ったら凄いスピードに達してる。
あれには敵わないかもしれないけど、俺だって痕跡を残さず素早く移動するのは自信ある。
落ち葉や草に踏みあとを付けないよう、木の幹に爪先を当てて蹴って、飛び移りながら走る。
汗が額に滲む。
なんだろ。
逃げるのが楽しいなんて。
変な感じ。
俺、ワクワクしてる。
ヒソカがもうすぐ追ってくる。
すぐに方角はバレないよう、二方向にわざと痕跡を残した。
一つは赤い実を落として、もう一つは足跡。
この森は葉っぱが多い木が疎らだから、上から見られたらすぐバレる。
だから木のうろか、ちょっとした穴を見つけたい。
中に入って絶をしても、円と凝で見つけられる可能性はある。
ヒソカの円の直径ってどのくらいだろう。
でもまあ、とりあえず探そう。
まだ六秒くらいのはず。
あ、川に出ちゃった。
段になった茂みを滑り降りて、丁度良い洞穴を見つけた。
覗き込んで、頷く。
こういうところに、俺なら隠れる。
でも、今回のルールだと違う。
握っていた実を眺める。
すぐに決めていた数字を首筋に書いた。
あれ。
ヒソカから見て合ってるよな。
えっと、逆に書いて、逆に見られるから……ああもう0にすればよかった。
水面で確認して、諦める。
川のそば。
水。
あ……
これ、使える?
もう一度水を覗く。
そろそろ十秒だ。
洞穴に細工をして、隠れなきゃ。
「隠れられるなら、洞穴か茂み♠」
残された赤い実を拾い上げる。
たった十秒でいくつ罠を残したのかな。
一つ一つ確認したい。
ボクがどう出てくると考えたのか。
今、ゴンはボクの行動の先読みで必死。
それだけで愉しい。
足跡の残った幹を見つけて、笑いを手で押さえて耐える。
持ってきた実を握り潰して、赤い汁を舐め上げた。
渋味が舌を刺激したが、それが毒のように脳を熱した。
盛り上がってきたじゃないか。
ゴン。
どこで息を潜めてる?
鬼のボクはいくらでも落ち葉を悠々と踏みつけるが出来る。
この差は堪らない。
汚れた手を木に擦り付けて、森を駆けた。
イルミみたいに穴を掘って埋まってることはないと思うんだけど。
そこを突かれたら困るね。