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愛とは違う
第2章 素直に言えば?
不安になって見上げたヒソカが、優しく微笑んだ。
「正解♥」
いつの間に拾ったのか、俺の靴を手に持って、膝をつく。
何をしてるか一瞬わからなかったけど、裸足を持ち上げられて焦って腰を下ろした。
「ちょっと、ヒソカ? 俺自分で履くから手離してっ」
誰かに靴を履かせてもらうなんて、ミトさんにしかしてもらった覚えがない。
それがヒソカにやられると凄く、こう、なんか恥ずかしい。
泥に汚れた靴に指先を入れられる。
何でこんな恥ずかしいかって、ヒソカの綺麗な手が汚れちゃうのが見ていて背中がぞくぞくするんだ。
なんでかわからないけど。
「石板返ししてたゴンが今度は念能力も使いこなせるようになるとはね♦」
ヒソカが独り言のように呟く。
俺はそれが誉め言葉に聞こえて固まった。
為すがままに、ブーツの紐まで丁寧に結んでもらう。
お尻の下の石の感触が妙に痛い。
ヒソカも膝痛いんじゃないの。
「俺、勝ったね」
「そうだね♠」
「……その、勝ったから」
モゴモゴと口ごもる。
ヒソカは黙って俺の言葉を待っていた。
二人とも低い視線で。
この、感じ。
あの屋上のときと似てる。
俺に目線を合わせてくれたあのときと。
だから、変なこと思い出して、変なこと言ってしまったんだ。
「今夜、一緒にいて」
川の水が流れる音が途絶えることなく響いている。
爽やかな風に、俺もヒソカも髪を揺らして見つめ合っていた。
あれ。
俺、なんて云った。
かくれんぼが終わったら、ヒソカがまたあの時みたいにどっか行っちゃうんじゃないかって。
今度なんて、いつ。
だから、せめて。
何故か、ヒソカと別れたくなかったから。
かくれんぼを提案したときはそんなこと、考えてなかったのに。
ヒソカが誉めたりするから。
靴を履かしてくれたりなんてするから。
そのせいだ。
そうだ。
勝っても別にご褒美とか欲しかったわけでも、何か言うこと聞いてほしかった訳でもないのに。
「イイよ♥」
「えっ」
あっさり頷いたヒソカに驚いてから、拍子抜けする。
「いいの?」
「別に今夜は特に用はなかったし♣」
「それだけ?」
今度はヒソカが意外そうに眉を上げた。
俺は目線をさ迷わせた。
何を言いそうになったか、わかっちゃったから。
「ゴン?」
呼ばないで。
バカみたいなこと言いそう。