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愛とは違う
第3章 壊させて
しばらく山を散歩して、頂上の樹に登って夕陽を見てから街に下った。
覚えた壁模様を伝って、広場に辿り着く。
賑やかなテラス。
連れ添って歩く家族に夫婦。
駆けていく子ども。
鳥たちは昼の間にどこかへ消えてしまったよう。
とりあえず、中心の噴水の縁に腰かける。
連続する水の衝突音が、鼓膜を揺らす。
目を閉じて、それに意識を集中させた。
少し、考えてたんだ。
水見式では、浮かべた葉を中心に念を送り込もうと修行したけれど、こうして少し距離が離れて眼で認識していなくても、使えるんじゃないかって。
腰元からオーラを水に伸ばしていく。
常に跳ねる水面からは不規則な波が感じられる。
でも、そのリズムを掴めば。
静かな水面じゃなくても。
流れる河すら操れるような。
増幅させて。
その姿を変え……
ぽんと頭に乗せられた手に意識が途絶える。
気づけば息が上がっていた。
胸元に汗が滲んでいるのを感じつつ、顔を起こして相手を見上げる。
「こんなところでも修行?」
「ヒソカ……驚いたよ」
拳を握って押し付けていた腿はじんじんしてるし、服の中が蒸れてる。
額の汗を拭って立ち上がった。
「そういうのは人前でやらないんだよ♣」
「ヒソカはどこでやってるの」
「んー……秘密♦」
「師匠とか、いたの?」
「さあ? いたかもしれないし、奇術師に師なんていらないかもしれない♥」
「よくわかんないよ」
相変わらずはぐらかされて掴めない。
ヒソカの師匠。
子どもの頃好きだったお菓子の名前で作り上げたガムとゴムの連携。
もしかして、ずっと一人で。
なら、どうして。
強くなりたかったから?
「行こうか♣」
「うん」
ヒソカの背中についていく。
足幅は二倍くらいある。
だから、常に早歩き。
コツコツとヒールを鳴らして。
いつも思うけど歩きづらくないのかな。
前にスーツを着たとき、少しのヒールが付いた革靴ですら歩きにくかったのに。
ヒソカのヒールは凄く細い。
道のタイルに嵌まってしまいそう。
つーっと視線を上げていく。
縞々の靴下に、真っ白のパンツ。
腰のぐるぐるに、ゆったりした上着。
あの腕のリングも体を鍛えるものなのかな。
ヒソカの格好って本当に不思議。
カツン。
止まったヒソカが振り返る。
「な、なに」
「視線がね……」