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愛とは違う
第3章 壊させて
そこは見たことのない路地裏の建物だった。
前には酒場と怪しげな店が並び、大きな箱が積んである。
漂う空気は濁っていて、息がし辛い。
「ヒソカ、こんなところに泊まってるの?」
前を進む大きな背中に問いかける。
暗闇に映える白い肌。
目印としてはいいよね。
「んー……ゴンにはちょっと合わないかな♠」
「ヒソカっぽいけど」
「そうかい♥」
ヒールがコツコツとタイルを蹴る。
音を立てて開いたガラス戸の向こうには、褐色のカウンターに老人が腰掛けていた。
「ダイヤの8のキーを♣」
「早い帰りだな。少年でも買ってきたか」
「そんなところ♦」
何を話してるかまでは聞こえなかったけど、交ざれない大人の壁を感じた。
こういうところのチェックインていうの?
レオリオとかキルアがやってくれたから。
勿論、自分でもやったことはあるけど。
まだ慣れない。
右奥の螺旋階段前でヒソカが手招いた。
後ろから酒臭い客が数人入ってきたようで、急いでヒソカの元に向かう。
「なに?」
なんだか見つめられて尋ねてしまう。
「いや♠ キミってたまに子どもらしく単純にああいう輩を怖がったりするんだって新鮮で……」
「怖がってない」
むっと言い返したけど、どうなんだろう。
関わりたくないなあとは思う。
回りながら階段を上っていく。
くるくる。
ヒソカを追って。
店の背景も回転してる。
「一人なの?」
「大概はね♣」
廊下に出て、意外に広い空間を奥へと進む。
「ボクが誰かと過ごすの想像できる?」
「……クロロはできる」
「くくっ、なんで?」
「仲良さそうっていうか、ヒソカが興味ありそうっていうか……クロロくらいじゃないと隣に立てない? よくわかんない」
アジトで会ったときもみんなから離れたところに座ってた。
誰かと一緒にいるってのがまずないし。
ドッヂボールのときも思ったし。
扉が開き、中に案内される。
部屋番号がトランプになっていて、ダイヤの8だった。
だからこのホテルにしてるのかな。
ベッドとテーブルしかないシンプルな部屋が現れる。
カーペットは汚れた臙脂色で、壁はむき出しのコンクリート。
天井からは似つかわしくない豪華な、けれど小さく控えめなシャンデリアが垂れている。
シーツは寝た跡のないほど綺麗で、生活味がまるでない。