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愛とは違う
第1章 治らなければいいのに
手が離れる。
ヒソカは嘘っぽい笑顔をやめて、真顔になった。
「……それは約束できないかな♣」
あ。
なんだろ。
きゅうって。
心が虚しくなる。
「じゃあさ、ボクとついてくる?」
ばっと顔を上げる。
気まぐれ?
それとも本気?
風の音だけが響く。
ヒソカと旅をする。
想像もしたこと無かった。
ハンター試験から惹かれた強さ。
謎めいた空気。
見えない本音。
釣り針ひとつで挑んで、バッヂを取ったときの達成感。
追い付きたい。
圧倒的な差も、少しずつ詰めて。
ドッヂボールの時は凄くワクワクした。
初めてヒソカが仲間に感じた。
最後は俺の代わりにアウトを取ってくれたって聞いたとかも。
なんだろう。
ヒソカと旅したらどうなるんだろう。
じっと見てみる。
トレーニング、なにしてんのかな。
食事は?
寝てるとこも見たことないし。
生活感ていうの。
それがないんだもん。
「時間切れ♠」
「えっ」
クスクスと笑われる。
ほ、本気で考えたのに。
なんだか、急に泣きそうになる。
ヒソカがオレの顔を覗きこむ。
「本当に今日はキミらしくないねえ♦」
「俺は……ヒソカについてったらどうなるかなって本気で考えたの!」
「え?」
病室と違って日光が頭をぼうっとさせる。
独り言みたいに呟く。
「もしそうなったら、ヒソカのこと……もっとわかるのかなって。そしたら……おいつ、く」
ふらっと倒れる俺を、ヒソカが両腕で受け止めてくれた。
眼も開けられない。
はあはあ、と熱い息が出てくる。
「ヒソ、カぁ」
ぎゅ、と腕を背中に回す。
「まったく……治らなければ良いのにね♣」
聞き間違いかと思った。
だって、聞いたことない優しい声だったから。