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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第1章 かくも愛しき田園の一日

「…ウィルトシャーの村の教会の薔薇は見事で、私は車から降りて思わず見とれていた。…そこに…君が通りかかったんだ」
「…礼拝に訪れただけですよ…」
木で鼻をくくるような返答にもリヒャルトは気にも留めずにうっとりとオスカーを見つめ、唄うようにかき口説く。
「…薔薇の精が現れたかと思ったよ。…美しい黒髪に、燃えるような碧の瞳、アラバスターのような肌、ギリシャ彫刻のような横顔…。
…見つけた!私のドリアングレイだ!…とね」
オスカーは露骨に嫌な顔をした。
「ドクターアーレンベルグ、この国でワイルドは禁句ですよ」
リヒャルトは両手を広げた。
「私は全く気にしない。このボタンホールにグリーンカーネーションを挿して往来を歩いても構わないさ」
オスカーは冴え冴えとした眼差しでリヒャルトを見る。
「およしなさい、ドクターアーレンベルグ。この国はフランスと異なり恐ろしく排他的な国です。
…貴方がこちらでの安穏とした生活を望まれるのでしたら…」
「私は安穏とした生活を送り、孫に囲まれて余生を送りたいなどと思わないからね」
不意に真剣な眼をするとオスカーに近づき、その陶器のように滑らかな頬に手を遣る。
「…麗しき薔薇の精のために破滅の道を歩むのなら、寧ろ本望だ」
「…ドクターアーレンベルグ…」
リヒャルトの顔が近づく。
吐息交じりにリヒャルトが囁く。
「…リヒャルトと呼んでくれ、オスカー…」
…突然、荒々しい音を立ててドアが開いた。
それと共に、甲高い叫び声が響き渡る。
「なにしてるのさ!オスカー!…リヒャルト先生!」
一瞬の間に、オスカーはリヒャルトを突き飛ばす。
「痛〜ッ!」
リヒャルトは壁にしたたか身体をぶつける。
「アルフレッド様、何もしてませんよ」
オスカーは澄ました顔でアルフレッドの元に歩む。
アルフレッドは碧の目を吊り上げ、薔薇色の頬を膨らませ、カンカンに怒っていた。
「嘘だ!今、リヒャルト先生がオスカーにキスしようとしてた!」
オスカーは美しい顔に笑みを浮かべる。
「私の目にゴミが入ってしまったのでドクターアーレンベルグに診ていただいていたのです」
「本当〜?」
疑わしそうなアルフレッド。
「本当ですよ。さあ、坊っちゃま、そろそろラテン語のお時間です。…ではドクター、ご機嫌よう」
呆気に取られているリヒャルトを残し、オスカーはアルフレッドを連れて部屋を出て行った。
「…礼拝に訪れただけですよ…」
木で鼻をくくるような返答にもリヒャルトは気にも留めずにうっとりとオスカーを見つめ、唄うようにかき口説く。
「…薔薇の精が現れたかと思ったよ。…美しい黒髪に、燃えるような碧の瞳、アラバスターのような肌、ギリシャ彫刻のような横顔…。
…見つけた!私のドリアングレイだ!…とね」
オスカーは露骨に嫌な顔をした。
「ドクターアーレンベルグ、この国でワイルドは禁句ですよ」
リヒャルトは両手を広げた。
「私は全く気にしない。このボタンホールにグリーンカーネーションを挿して往来を歩いても構わないさ」
オスカーは冴え冴えとした眼差しでリヒャルトを見る。
「およしなさい、ドクターアーレンベルグ。この国はフランスと異なり恐ろしく排他的な国です。
…貴方がこちらでの安穏とした生活を望まれるのでしたら…」
「私は安穏とした生活を送り、孫に囲まれて余生を送りたいなどと思わないからね」
不意に真剣な眼をするとオスカーに近づき、その陶器のように滑らかな頬に手を遣る。
「…麗しき薔薇の精のために破滅の道を歩むのなら、寧ろ本望だ」
「…ドクターアーレンベルグ…」
リヒャルトの顔が近づく。
吐息交じりにリヒャルトが囁く。
「…リヒャルトと呼んでくれ、オスカー…」
…突然、荒々しい音を立ててドアが開いた。
それと共に、甲高い叫び声が響き渡る。
「なにしてるのさ!オスカー!…リヒャルト先生!」
一瞬の間に、オスカーはリヒャルトを突き飛ばす。
「痛〜ッ!」
リヒャルトは壁にしたたか身体をぶつける。
「アルフレッド様、何もしてませんよ」
オスカーは澄ました顔でアルフレッドの元に歩む。
アルフレッドは碧の目を吊り上げ、薔薇色の頬を膨らませ、カンカンに怒っていた。
「嘘だ!今、リヒャルト先生がオスカーにキスしようとしてた!」
オスカーは美しい顔に笑みを浮かべる。
「私の目にゴミが入ってしまったのでドクターアーレンベルグに診ていただいていたのです」
「本当〜?」
疑わしそうなアルフレッド。
「本当ですよ。さあ、坊っちゃま、そろそろラテン語のお時間です。…ではドクター、ご機嫌よう」
呆気に取られているリヒャルトを残し、オスカーはアルフレッドを連れて部屋を出て行った。

