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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第1章 かくも愛しき田園の一日

…そう…私達の出会いはドラマチックだった。
私はその日の内に貸屋敷と通いの料理人とメイド及び家政婦を契約し、グラント教授に私の推薦状を書いていただいたのだ。
「すこぶる美男子だと書き添えてくださいね!グラント教授」
「…必要かね?」
「大いに必要です!」
…リヒャルトが夢想の世界で微睡んでいると…
「ドクターアーレンベルグ、こんなところでうたた寝をなさると風邪を引きますよ」
素っ気ない美声が頭上から響いてきた。
瞼を開けると、今正に夢に見ていた薔薇の精…もとい美しき執事が佇んでいた。
「坊っちゃまをお部屋までお送りしてまいりました」
「また私に逢いたくなって戻ってきたのか!」
リヒャルトが思わず、オスカーの手を握りしめるとそれは即座に叩き落とされた。
「アルフレッド坊っちゃまの定期健診の結果をまだ伺っておりません」
ああ、とリヒャルトは肩を竦め、オスカーに向かいの椅子に座るように促す。
リヒャルトは慇懃に一礼すると美しく、腰を下ろした。
全ての所作が禁欲的で美しい青年だ。
黒い燕尾服は恐らくは先代の伯爵のお下がりだろうが、まるでそれが彼のために作られた最高の衣装の如く良く似合っていた。
分けても魅力的なのはエメラルドを思わす美しい碧の瞳であった。
冷たいような熱い熱情を秘めているような…不思議な魅惑に満ちた瞳だ。
リヒャルトは今日、書き込んだカルテに目を落とす。
「喘息の発作もここ3ヶ月は起きていないし、気管支炎を拗らすこともなくなったね。背もだいぶ伸びられたし、体重も増えられた。とても良い状態が続いているよ」
オスカーは花がほころぶように柔らかな微笑を浮かべた。
「…良かった…」
…私にはそんな微笑みを見せたこともないのに…。
リヒャルトはアルフレッドに嫉妬する。
だからつい、こんなことを言ってしまう。
「…そう。だからもう学校に通われることも考えてもいいんじゃないか?編入試験を受けられることになるが…お勉強は家庭教師について続けられているのだし」
オスカーの綺麗な眉が神経質に跳ね上がる。
「…学校?」
「ああ。…イートンは少し遠いが、ウィンチェスター校ならここから遠くはない。ご準備されるのも大変ではないだろう。…まあ、入学されたら寄宿生活だがね」
オスカーの縁なしの眼鏡がきらりと光る。
そして吐いて捨てるように言い放つ。
「…寄宿生活…?…あり得ません」
私はその日の内に貸屋敷と通いの料理人とメイド及び家政婦を契約し、グラント教授に私の推薦状を書いていただいたのだ。
「すこぶる美男子だと書き添えてくださいね!グラント教授」
「…必要かね?」
「大いに必要です!」
…リヒャルトが夢想の世界で微睡んでいると…
「ドクターアーレンベルグ、こんなところでうたた寝をなさると風邪を引きますよ」
素っ気ない美声が頭上から響いてきた。
瞼を開けると、今正に夢に見ていた薔薇の精…もとい美しき執事が佇んでいた。
「坊っちゃまをお部屋までお送りしてまいりました」
「また私に逢いたくなって戻ってきたのか!」
リヒャルトが思わず、オスカーの手を握りしめるとそれは即座に叩き落とされた。
「アルフレッド坊っちゃまの定期健診の結果をまだ伺っておりません」
ああ、とリヒャルトは肩を竦め、オスカーに向かいの椅子に座るように促す。
リヒャルトは慇懃に一礼すると美しく、腰を下ろした。
全ての所作が禁欲的で美しい青年だ。
黒い燕尾服は恐らくは先代の伯爵のお下がりだろうが、まるでそれが彼のために作られた最高の衣装の如く良く似合っていた。
分けても魅力的なのはエメラルドを思わす美しい碧の瞳であった。
冷たいような熱い熱情を秘めているような…不思議な魅惑に満ちた瞳だ。
リヒャルトは今日、書き込んだカルテに目を落とす。
「喘息の発作もここ3ヶ月は起きていないし、気管支炎を拗らすこともなくなったね。背もだいぶ伸びられたし、体重も増えられた。とても良い状態が続いているよ」
オスカーは花がほころぶように柔らかな微笑を浮かべた。
「…良かった…」
…私にはそんな微笑みを見せたこともないのに…。
リヒャルトはアルフレッドに嫉妬する。
だからつい、こんなことを言ってしまう。
「…そう。だからもう学校に通われることも考えてもいいんじゃないか?編入試験を受けられることになるが…お勉強は家庭教師について続けられているのだし」
オスカーの綺麗な眉が神経質に跳ね上がる。
「…学校?」
「ああ。…イートンは少し遠いが、ウィンチェスター校ならここから遠くはない。ご準備されるのも大変ではないだろう。…まあ、入学されたら寄宿生活だがね」
オスカーの縁なしの眼鏡がきらりと光る。
そして吐いて捨てるように言い放つ。
「…寄宿生活…?…あり得ません」

