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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第1章 かくも愛しき田園の一日

「私のような下々の庶民はパブリックスクールに通ったことはもちろんありませんが、どのようなところなのかはよく理解しています。
あんな悪の温床に…アルフレッド坊っちゃまを入学させるなど到底受け入れることはできませんね」
オスカーはきっぱりと言い放つ。
「それは、私がハロー校出身だと知って言っている?」
面白そうに尋ねるリヒャルトを目の端でちらりと見遣る。
「…やはり貴方も…。
…ん?ドクターアーレンベルグ、貴方はオーストリア貴族でしょう?なぜ英国のパブリックスクールに通われたのですか?」
「私の母は英国人なんだ。母のたっての希望でパブリックスクールだけはupper 6th formまで通ったのさ。…いやあ、実に楽しい5年間だったなあ…」
オスカーの美しい瞳が冷たくリヒャルトを眇める。
「…でしょうね…」
リヒャルトは不満そうに詰め寄る。
「あのさ。君、私の履歴書ちゃんと読んだ?華麗なる私の経歴の数々を!」
オスカーは形の良い唇の端に笑みを浮かべ、つんと顎を反らせる。
「…ざっと読みましたが、備考欄の『頗る美青年と強い自己推薦あり』との記述にそれ以上読む気をなくしました」
リヒャルトは頭を抱える。
「グラント教授め〜ッ‼︎」
「…そのような瑣末なことはどうでも良いのです」
「…さ、瑣末?」
「アルフレッド坊っちゃまの主治医としての腕が優れていらしたらそれ以上はなにも必要ありません」
「…あ、そ…」
リヒャルトは肩を落とす。
そんなリヒャルトにオスカーは絵に描いたような社交辞令の美しい笑みを送る。
「ドクターアーレンベルグはベルリン大学医学部を首席でご卒業されたそうですね。…その後の経歴は…どうにも胡散臭いものばかりですが、信頼できるドクターグラントが、医術の腕は極めて優秀とのお墨付きをなされていましたので、それで充分なのです」
リヒャルトはがっくりと肩を落とす。
「…綺麗な薔薇には棘だらけだ…」
「…と言うわけで、私は横暴な上下関係と虐めが罷り通るようなところには、いかにそこが名門貴族の子弟が通うパブリックスクールであろうと、アルフレッド坊っちゃまを通わせる気にはなれません。狼の群れにか弱き羊を放り込むようなものですからね」
そう言うとすっと立ち上がり、その場を辞そうとするオスカーに、リヒャルトは静かに声をかける。
「…待ちたまえ、オスカースペンサー」
あんな悪の温床に…アルフレッド坊っちゃまを入学させるなど到底受け入れることはできませんね」
オスカーはきっぱりと言い放つ。
「それは、私がハロー校出身だと知って言っている?」
面白そうに尋ねるリヒャルトを目の端でちらりと見遣る。
「…やはり貴方も…。
…ん?ドクターアーレンベルグ、貴方はオーストリア貴族でしょう?なぜ英国のパブリックスクールに通われたのですか?」
「私の母は英国人なんだ。母のたっての希望でパブリックスクールだけはupper 6th formまで通ったのさ。…いやあ、実に楽しい5年間だったなあ…」
オスカーの美しい瞳が冷たくリヒャルトを眇める。
「…でしょうね…」
リヒャルトは不満そうに詰め寄る。
「あのさ。君、私の履歴書ちゃんと読んだ?華麗なる私の経歴の数々を!」
オスカーは形の良い唇の端に笑みを浮かべ、つんと顎を反らせる。
「…ざっと読みましたが、備考欄の『頗る美青年と強い自己推薦あり』との記述にそれ以上読む気をなくしました」
リヒャルトは頭を抱える。
「グラント教授め〜ッ‼︎」
「…そのような瑣末なことはどうでも良いのです」
「…さ、瑣末?」
「アルフレッド坊っちゃまの主治医としての腕が優れていらしたらそれ以上はなにも必要ありません」
「…あ、そ…」
リヒャルトは肩を落とす。
そんなリヒャルトにオスカーは絵に描いたような社交辞令の美しい笑みを送る。
「ドクターアーレンベルグはベルリン大学医学部を首席でご卒業されたそうですね。…その後の経歴は…どうにも胡散臭いものばかりですが、信頼できるドクターグラントが、医術の腕は極めて優秀とのお墨付きをなされていましたので、それで充分なのです」
リヒャルトはがっくりと肩を落とす。
「…綺麗な薔薇には棘だらけだ…」
「…と言うわけで、私は横暴な上下関係と虐めが罷り通るようなところには、いかにそこが名門貴族の子弟が通うパブリックスクールであろうと、アルフレッド坊っちゃまを通わせる気にはなれません。狼の群れにか弱き羊を放り込むようなものですからね」
そう言うとすっと立ち上がり、その場を辞そうとするオスカーに、リヒャルトは静かに声をかける。
「…待ちたまえ、オスカースペンサー」

