この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第1章 かくも愛しき田園の一日
翌日、リヒャルトは午前中の診療を終え、のんびりと窓の外を眺めながらお茶を愉しんでいた。
…イギリスには旨いアイスバインもクロワッサンもないが、紅茶だけは世界一だ。
特に「紅茶のシャンパン」と言われるダージリンが、リヒャルトのお気に入りだ。

…薫り高い紅茶を愉しんでいると…
診療所の蔓薔薇の垣根の奥から、目の覚めるような美青年が現れた。
「…私の薔薇の精だ!これは春の夢なのか⁉︎」
リヒャルトは立ち上がり、窓を開け放つ。

…薔薇の精…もとい、黒い制服姿のオスカーは窓辺まで歩み寄り、露骨に冷たい口調で言い放つ。
「…ドクターアーレンベルグ、貴方の頭の中は年がら年中お花畑のご様子ですね」
リヒャルトは上機嫌で手を差し伸べる。
「…ああ、その美しい顔に似合わぬ毒舌ぶり!正に私の薔薇の精だ!
…昨日逢ったばかりだと言うのにどうした?もう私に逢いたくなったのか?」
オスカーはけんもほろろにリヒャルトの手を払い落とす。
「もちろん違います。坊っちゃまが今朝、この春一番の蚊に刺されたので、虫刺されのお薬を頂きにまいりました」
リヒャルトは肩をすくめる。
「…あ、そ…」
そして、室内を指差し
「入りたまえ。一緒にお茶でもどうだ?」
と勧める。
オスカーはあっさり首を振る。
「いいえ、結構です。…午後にロンドンの屋敷から使いがまいりますのですぐに戻らなくてはなりませんから」
「…取り付く島がないとはこのことだ。…ではそこのベンチに掛けて待ちたまえ」
リヒャルトはぶつぶつ言いながら、虫刺されの軟膏を調合する。

オスカーは白衣のリヒャルトが器用に薬を調合する様子にやや見惚れながら、軽く咳払いをして口を開いた。
「…あの…ドクターにお伺いしたいことがあるのですが…」
「なんだい?」
「…ケンブリッジの学生寮は個室ですか?それとも大部屋なのでしょうか?」
「へ?」
オスカーが豹変したかのような形相で窓辺から身を乗り出す。
「アルフレッド坊っちゃまが!将来はケンブリッジに行かれると言うのです!私を近くの貸し屋敷に住まわせて、週末は逢いに来てくださると!」
オスカーの碧の瞳がきらきら輝く。
「…へ〜、そりゃ良かったね〜」
シェイクスピア劇の最低の大根役者ばりの棒読み台詞調で答える。
…なんだよ、その宝石みたいなきらきらした眼は!
私には一度だってそんな眼差しで見てくれたことはない癖に!
/67ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ