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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
レディギネヴィアとフレデリック・エルギンを乗せたメルセデスがソールズベリーの屋敷に到着したのは翌日の午後のことだった。

車寄せに出迎えるアルフレッドを一目見ると、レディギネヴィアは感に耐えたように歩み寄り、抱擁する。
「まあ!アルフレッド!少し見ない間に背が伸びて…」
レディギネヴィアは普段の厳しい顔はどこへやら…まるで甘い砂糖菓子のように蕩けた表情をしながら、アルフレッドの頬を愛しげに撫でる。
ロンドンの屋敷では使用人から女王様のような伯爵夫人と恐れつつ崇められているレディギネヴィアだが、眼の中に入れても痛くない程に可愛がっているアルフレッドを前にするとかたなしだ。
「…まあまあ…!エドワードに良く似てきて…金髪と碧の瞳の美しいこと!」
愛する亡き息子の面影をアルフレッドに重ねては涙するのはもはや一連の流れだ。
アルフレッドは4歳からこの誇り高くも愛情深い祖母に育てられてきたので、レディギネヴィアのことは大好きだ。
「お祖母様!お会いしたかったです。お祖母様もご機嫌麗しく、何よりです」
レディギネヴィアの頬にキスをしていると、隣からなにやら冷ややかな視線を感じる。
「…あ…」

フレデリック・エルギンは明るい春の陽光の下、気怠げに冷めた眼差しで佇んでいた。
プラチナブロンドにアイスブルーの瞳、肌は透けるように白い…。
背はすらりと高く、16という年齢より遥かに大人びた美しい少年だ。
「フレデリック!久しぶりだね!」
アルフレッドは人懐こい笑顔をフレデリックに向け、抱擁する。
フレデリックは渋々といった様子でアルフレッドにキスを返す。
「やあ、久しぶり。アルフレッド。君は相変わらず天使のように可愛らしいね」
フレデリックは形の良い唇の端に皮肉家めいた笑みを浮かべる。
さすがのアルフレッドも少しむっとして口をへの字に曲げる。
「フレデリックとは旧知の仲ですものね。アルフレッド、色々案内してあげてね」
どうやらレディギネヴィアはこの遠縁の美しい少年がお気に入りのようだ。
「…はい、お祖母様」
仏頂面で返事するアルフレッドをフレデリックは流し目でくすりと笑う。

…そこに今まで隅に控えていたオスカーが現れ、優雅に挨拶をする。
「レディギネヴィア、フレデリック様、ようこそお越し下さいました」
フレデリックはオスカーを見上げ、驚いたようにそのアイスブルーの瞳を見張る。
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