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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲

「浴室はこちらでございます。すぐに下僕がフレデリック様のお召し物をいくつか選んでこちらにお持ちします。なにかございましたら、この呼び鈴でお知らせくださいませ」
オスカー・スペンサーと呼ばれた執事は隙のない口上と身のこなしで、フレデリックに浴室の案内をした。
…随分と美しい執事だ。
彼がアルフレッドとロンドンに随行したことはなかったから、今まで知らなかった。
フレデリックは改めて彼を見つめる。
艶やかな黒髪に美しい碧の瞳…もっとも縁なし眼鏡をかけているので、少々全貌は見づらいが…
ギリシャ彫刻のように端正な鼻筋に形の良い唇…。
すらりと高い背は、年にしては長身なフレデリックより更に高い。
しなやかな細身の身体つきだが、均整のとれた筋肉が付いているのが見て取れる。
…あの子供っぽいアルフレッドには勿体無いような美しい執事だ。
「フレデリック様…?」
黙り込んでいるフレデリックを気遣い、オスカーが声をかける。
「…君は、ずっとアルフレッドの執事なのか?」
唐突な質問にもオスカーは、少しも動じずに柔かに答える。
「はい。アルフレッド様が4歳の時からこちらのソールズベリー伯爵家でお世話になっております」
「…ふう…ん。…アルフレッドが4歳ということは、ソールズベリー伯爵夫妻があのタイタニックの悲劇的な事故で亡くなられてからか…」
「…はい。左様でございます」
フレデリックは冷ややかに肩をすくめる。
「…アルフレッドは幼い頃に両親を亡くし、世にも可哀想な御曹司と言われているが、両親は莫大な財産を彼に遺したし、社交界では裏の女王陛下と評される頼り甲斐のある祖母がいて…君みたいな美しい執事がいる。…どこが可哀想な御曹司なんだか」
オスカーは瞬き一つすることもなく、静かに答える。
「…確かにアルフレッド様はお可哀想な御曹司ではございません。…なぜなら、私が命を懸けてお護りしておりますから」
フレデリックはアイスブルーの瞳を見開き、絶句した。
オスカーは、穏やかな笑みを浮かべると
「それではごゆっくり、ご入浴をお楽しみください。
…あ、そうそう。棚にあるプロバンスのラベンダーの入浴剤はお勧めですよ。…お疲れが取れますように」
と、優雅な一礼をするとあっけに取られているフレデリックを残してその場を去ったのだった。
オスカー・スペンサーと呼ばれた執事は隙のない口上と身のこなしで、フレデリックに浴室の案内をした。
…随分と美しい執事だ。
彼がアルフレッドとロンドンに随行したことはなかったから、今まで知らなかった。
フレデリックは改めて彼を見つめる。
艶やかな黒髪に美しい碧の瞳…もっとも縁なし眼鏡をかけているので、少々全貌は見づらいが…
ギリシャ彫刻のように端正な鼻筋に形の良い唇…。
すらりと高い背は、年にしては長身なフレデリックより更に高い。
しなやかな細身の身体つきだが、均整のとれた筋肉が付いているのが見て取れる。
…あの子供っぽいアルフレッドには勿体無いような美しい執事だ。
「フレデリック様…?」
黙り込んでいるフレデリックを気遣い、オスカーが声をかける。
「…君は、ずっとアルフレッドの執事なのか?」
唐突な質問にもオスカーは、少しも動じずに柔かに答える。
「はい。アルフレッド様が4歳の時からこちらのソールズベリー伯爵家でお世話になっております」
「…ふう…ん。…アルフレッドが4歳ということは、ソールズベリー伯爵夫妻があのタイタニックの悲劇的な事故で亡くなられてからか…」
「…はい。左様でございます」
フレデリックは冷ややかに肩をすくめる。
「…アルフレッドは幼い頃に両親を亡くし、世にも可哀想な御曹司と言われているが、両親は莫大な財産を彼に遺したし、社交界では裏の女王陛下と評される頼り甲斐のある祖母がいて…君みたいな美しい執事がいる。…どこが可哀想な御曹司なんだか」
オスカーは瞬き一つすることもなく、静かに答える。
「…確かにアルフレッド様はお可哀想な御曹司ではございません。…なぜなら、私が命を懸けてお護りしておりますから」
フレデリックはアイスブルーの瞳を見開き、絶句した。
オスカーは、穏やかな笑みを浮かべると
「それではごゆっくり、ご入浴をお楽しみください。
…あ、そうそう。棚にあるプロバンスのラベンダーの入浴剤はお勧めですよ。…お疲れが取れますように」
と、優雅な一礼をするとあっけに取られているフレデリックを残してその場を去ったのだった。

