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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
「…それでアルフレッド坊っちゃまはご機嫌斜めなのか」
ドクター・アーレンベルグは、アルフレッドの週に一度の定期診察を終えた後に、小客間でダージリンを啜りながら合点がいったように頷いた。
「…ええ、すっかりフレデリック様とは犬猿の仲です…。…もっともアルフレッド様が一方的にフレデリック様に敵意を持っておしまいになって…。
フレデリック様はそんなアルフレッド様を揶揄うので更に仲が拗れるという負の連鎖なのですよ」
オスカーは疲れたように溜息を吐いた。
リヒャルトは片眉を上げて、少し驚いたように尋ねる。
「君が溜息とは珍しいな」
目上の、しかも主人の主治医の前で礼を欠いた行為に、オスカーは素早く詫びる。
「…ドクターの前で、大変失礼いたしました」
「堅苦しいことを言うな。寂しいじゃないか」
そのまま馴れ馴れしく手を握ろうとするのをオスカーは冷たく払いのけ、
「…今朝も、一悶着あったのですよ…」
フレデリックがオスカーにわざと用事を言いつけ、独占しようとするのに腹を立てたアルフレッドが、フレデリックに詰め寄り…
「アルフレッド坊っちゃまはスープ皿をひっくり返しておしまいになり、危うく大惨事になるところでした…その後も…フレデリック様が言い出したことで大変な騒ぎに…」
オスカーは長く美しい人差し指をこめかみに当て、やはりまた溜息を吐いた。
「…相当疲れているな…」
リヒャルトは目を丸くして驚く。
「君ほどの完璧な執事を悩ますとは、フレデリック様は相当手練れな坊っちゃまだな」
オスカーは切れ長な怜悧な碧の瞳でちらりとリヒャルトを見遣る。
そして、咳払いをしつつ切り出した。
「…ドクター・アーレンベルグ、実は折り入ってお願いがあるのですが…」
リヒャルトの蒼い瞳がきらきらと輝き出す。
目も止まらぬ速さでオスカーの両手をぎゅっと握りしめ
「何だい?君の頼みなら何だって叶えてあげるよ!」
と声を弾ませるのをオスカーは容赦なく突き飛ばし、
「…実は…」
と、やや困惑した調子で語り出したのだった。
ドクター・アーレンベルグは、アルフレッドの週に一度の定期診察を終えた後に、小客間でダージリンを啜りながら合点がいったように頷いた。
「…ええ、すっかりフレデリック様とは犬猿の仲です…。…もっともアルフレッド様が一方的にフレデリック様に敵意を持っておしまいになって…。
フレデリック様はそんなアルフレッド様を揶揄うので更に仲が拗れるという負の連鎖なのですよ」
オスカーは疲れたように溜息を吐いた。
リヒャルトは片眉を上げて、少し驚いたように尋ねる。
「君が溜息とは珍しいな」
目上の、しかも主人の主治医の前で礼を欠いた行為に、オスカーは素早く詫びる。
「…ドクターの前で、大変失礼いたしました」
「堅苦しいことを言うな。寂しいじゃないか」
そのまま馴れ馴れしく手を握ろうとするのをオスカーは冷たく払いのけ、
「…今朝も、一悶着あったのですよ…」
フレデリックがオスカーにわざと用事を言いつけ、独占しようとするのに腹を立てたアルフレッドが、フレデリックに詰め寄り…
「アルフレッド坊っちゃまはスープ皿をひっくり返しておしまいになり、危うく大惨事になるところでした…その後も…フレデリック様が言い出したことで大変な騒ぎに…」
オスカーは長く美しい人差し指をこめかみに当て、やはりまた溜息を吐いた。
「…相当疲れているな…」
リヒャルトは目を丸くして驚く。
「君ほどの完璧な執事を悩ますとは、フレデリック様は相当手練れな坊っちゃまだな」
オスカーは切れ長な怜悧な碧の瞳でちらりとリヒャルトを見遣る。
そして、咳払いをしつつ切り出した。
「…ドクター・アーレンベルグ、実は折り入ってお願いがあるのですが…」
リヒャルトの蒼い瞳がきらきらと輝き出す。
目も止まらぬ速さでオスカーの両手をぎゅっと握りしめ
「何だい?君の頼みなら何だって叶えてあげるよ!」
と声を弾ませるのをオスカーは容赦なく突き飛ばし、
「…実は…」
と、やや困惑した調子で語り出したのだった。