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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
「…田舎は退屈だなあ…。持ってきた本は全て読んでしまったし、何もすることがない」
朝食の席で、フレデリックはあからさまに小馬鹿にしたような態度でぼやく。
レディギネヴィアは寝室で朝食を取るので、朝食室には姿を現さない。
だからフレデリックも露骨に嫌味が言えるのだ。
アルフレッドは愛らしい眉をぴくりと動かしたが、挑発には乗るものかと決意を固めていたので、トーストにマーマレードを塗りながら淡々と答える。
「…図書室の本を読みなよ。何千冊もあるから1年いても読みきれないさ」
フレデリックは鼻で笑う。
「…君んちの本といったらしかつめらしい本や人畜無害な本ばかりじゃないか。僕は毒な本が読みたいのさ」
素直なアルフレッドはマーマレードを塗る手を止めて、思わず尋ねる。
「…毒な本…て?」
にやりと笑うとフレデリックはテーブルから身を乗り出し囁く。
「…発禁ぎりぎりの官能小説とかさ…」
「…かんのう…?なにそれ…」
フレデリックは目を丸くする。
「君、本当に14歳?7歳の間違いじゃなくて?」
むっとしたアルフレッドは拳をテーブルに叩きつける。
「なんだよ!大人ぶっちゃってさ!」
桜色の唇を尖らせて怒るアルフレッドに、フレデリックは
「いいかい?官能小説て言うのはね…」
と勿体つけながら説明しようとするのに、後ろに控えていたオスカーが、さりげなく口を挟む。
「…フレデリック様、いささか朝の話題には相応しくないような気がいたしますが…」
フレデリックは、眉を顰めると
「…やれやれ、こんな過保護な執事がいるんじゃ君がbebeちゃんなのも無理からぬことだ」
半ば哀れむように見る。
「だから!bebeちゃんて言うなってば!」
アルフレッドはテーブルから立ち上がる。
「アルフレッド様、朝食のお席ではお立ちになってはなりません」
と、アルフレッドを諌めつつも話題をさりげなく振る。

「それではフレデリック様、どちらかにお出かけになるのはいかがでしょうか?ピクニックには最適な季節ですよ」
「…ピクニック?」
疑い深げな眼差しでオスカーをちらりと見上げる。
「はい。田舎には田舎の良さがあります。それを満喫されない手はございません」
フレデリックは暫し考え込んでいたがやがて何かを思いついたかのようににやりと笑った。
「…いいね。ピクニック。…いい所を思いついたよ」
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