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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第1章 かくも愛しき田園の一日
…アルフレッド坊っちゃまの朝は遅い。
きっかりと8時と決まっている朝食に間に合ったためしは未だかつて一度もない。
オスカーは先代のソールズベリー伯爵に下賜された銀時計で時間を確かめる。
「…8時15分…」
端正な眉を顰め、銀時計を胸ポケットに戻す。
アルフレッドの部屋のドアを規則正しくノックする。
…もちろん返事はない。
「失礼いたします。アルフレッド様」
声をかけて、ドアを開ける。
広々とした室内は明るいアイボリーと緑の色彩で統一されている。
寝台はクリーム色の温かな色合いの可愛らしいものだ。
アルフレッドを溺愛している祖母、レディギネヴィアが、アルフレッドのために特注した北欧の寝台である。
四柱に支えられた天蓋からは美しいレースが垂れ下がり、そこに眠る佳人を想像させるのに充分なものだった。
オスカーはしなやかな動きで寝台に近づく。
「アルフレッド様、ご起床のお時間です」
…もちろん返事はない。
レースの覆いをふわりと上げる。
白い羽布団に埋もれて眠るオスカーの幼き主人…
アルフレッドはすやすやと眠っていた。
…蜂蜜を溶かしたような金髪、ミルクのような白い肌、蜜色の睫毛は長く濃い。
彫刻刀で刻んだような繊細な鼻筋、唇はルビーの如く紅く、半開きになった口からは静かな寝息が漏れている。
…まるで天使が人間に形を変えたら斯くあるであろう…というような美しい少年の姿だ。
オスカーは毎朝見ても思わず見惚れてしまう自分に、自戒を込めて咳払いし、やや大きな声で呼び掛ける。
「アルフレッド様、ご起床のお時間でございます」
…もちろんまだまだ返事はない。
アルフレッドは羽枕を抱えたまま、
「…う…ん…」
と呟いて寝返りを打っただけである。
オスカーの片眉がぴくりと動く。
白手袋を嵌めた手が、情け容赦なくアルフレッドの握りしめている羽布団を勢いよく奪い去った。
アルフレッドの身体が、広い寝台でごろりと転がる。
次の瞬間、蜜色の睫毛がぱっちりと開き、アルフレッドの碧色の瞳が驚きに見開かれる。
「…な、な、何をするんだ‼︎オスカー‼︎」
きっかりと8時と決まっている朝食に間に合ったためしは未だかつて一度もない。
オスカーは先代のソールズベリー伯爵に下賜された銀時計で時間を確かめる。
「…8時15分…」
端正な眉を顰め、銀時計を胸ポケットに戻す。
アルフレッドの部屋のドアを規則正しくノックする。
…もちろん返事はない。
「失礼いたします。アルフレッド様」
声をかけて、ドアを開ける。
広々とした室内は明るいアイボリーと緑の色彩で統一されている。
寝台はクリーム色の温かな色合いの可愛らしいものだ。
アルフレッドを溺愛している祖母、レディギネヴィアが、アルフレッドのために特注した北欧の寝台である。
四柱に支えられた天蓋からは美しいレースが垂れ下がり、そこに眠る佳人を想像させるのに充分なものだった。
オスカーはしなやかな動きで寝台に近づく。
「アルフレッド様、ご起床のお時間です」
…もちろん返事はない。
レースの覆いをふわりと上げる。
白い羽布団に埋もれて眠るオスカーの幼き主人…
アルフレッドはすやすやと眠っていた。
…蜂蜜を溶かしたような金髪、ミルクのような白い肌、蜜色の睫毛は長く濃い。
彫刻刀で刻んだような繊細な鼻筋、唇はルビーの如く紅く、半開きになった口からは静かな寝息が漏れている。
…まるで天使が人間に形を変えたら斯くあるであろう…というような美しい少年の姿だ。
オスカーは毎朝見ても思わず見惚れてしまう自分に、自戒を込めて咳払いし、やや大きな声で呼び掛ける。
「アルフレッド様、ご起床のお時間でございます」
…もちろんまだまだ返事はない。
アルフレッドは羽枕を抱えたまま、
「…う…ん…」
と呟いて寝返りを打っただけである。
オスカーの片眉がぴくりと動く。
白手袋を嵌めた手が、情け容赦なくアルフレッドの握りしめている羽布団を勢いよく奪い去った。
アルフレッドの身体が、広い寝台でごろりと転がる。
次の瞬間、蜜色の睫毛がぱっちりと開き、アルフレッドの碧色の瞳が驚きに見開かれる。
「…な、な、何をするんだ‼︎オスカー‼︎」