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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
「…なるほど…それは坊っちゃまには一大事だな」
リヒャルトは神妙に頷いた。
「はい。なにしろアルフレッド坊っちゃまは水と名の付くものは大の苦手…。海、川、湖、池はもちろんのことプール、お庭の噴水ですら、頑として近寄らないですし…お風呂も大嫌いで…真冬でもシャワーで済ませる始末なのです」
「それと言うのも、あの悲劇的な海難事故のタイタニック号でご両親の伯爵夫妻が亡くなられたからなのだろう?
…すっかりトラウマになられているのだろうな。お気の毒なことだ…」
オスカーは瞼を伏せる。
「…はい。…アルフレッド様はまだ4歳でしたが、大変に多感なお子様でしたので、暫くは事故のショックからお一人ではお寝みになれないほどでした」

…アルフレッドは当初、両親と同行してアメリカに渡るはずだったのだが、前日に突然気管支炎を起こしてしまった。
元々病弱なアルフレッドに、この状態での長旅は好ましくないとの主治医ドクター・グラントの判断から、やむなく夫妻のみの渡米となったのだ。
アルフレッドの母が、イギリスから嫁いで行った末妹の初出産を祝うための渡米であった。

置いて行く我が子のことを、アルフレッドの母は出発直前まで心配し、ぎりぎりまで枕元に座りアルフレッドに何度もキスをした。
そして、胸に掛けていた大切なロザリオをアルフレッドの首に掛け
「…私の愛しいアルフレッド、このロザリオが貴方を生涯守りますように。…そして、お母様はどこにいても貴方を見守っていますよ…」
と、アルフレッドを優しく抱擁した。

「…奥様は、もしかしたらご自分の運命を予感されていのかもしれません…」
喪服姿でしくしく泣き続けるアルフレッドを抱きしめながら、ナニーは涙を拭いた。

オスカーは夫人とは対面したことはなかったが、残された肖像画や写真からは、アルフレッドに良く似たハニーブロンドと優しげに整った美貌が見て取れた。

…これからアルフレッドに仕える執事だと名乗ったオスカーに、アルフレッドはナニーの胸の中から、涙で一杯の碧の瞳を向け、小さな手を差し出した。
「…オスカー、ずっと一緒にいて…」
…そうしてオスカーは、ソールズベリー伯爵夫妻の葬儀のその日からずっと、片時も離れずにアルフレッドに仕え、見守ってきたのだった。
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