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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
「…なるほど…。アルフレッド坊っちゃまが君に絶大なる信頼を寄せるのはそこか…」
オスカーはしみじみと呟く。
「…刷り込み…みたいなものだな。ご両親が亡くなられショックを受けている時に目の前に世にも美しい青年が現れ、生涯の忠誠を誓われたのだ。それは夢中になるはずだよ。
…と言うか…ズルくないか⁈アルフレッド坊っちゃまは‼︎」

急に怒り出したリヒャルトにオスカーは眉を顰める。
「何をいきなりお怒りになっているのですか?」
「だってさ‼︎この世の不幸に見舞われたら、君が一生連れ添ってくれるなら私だってそうして欲しかったさ‼︎」
頭の血管が切れそうになる程の苛立ちを感じたオスカーは、いきり立つリヒャルトの前に立ちはだかり、冷たく言い放つ。
「ドクター・アーレンベルグ、貴方は思考回路が実におかしい‼︎なぜ私が貴方に生涯連れ添わなければならないのですか⁈花嫁でもないのに‼︎」

途端に、リヒャルトの瞳は蕩けるようにうっとりと細められ、オスカーの両手を握りしめる。
「…花嫁…!なんて素敵な言葉なんだ…!…そんなロマンチックな言葉が出て来ると言うことは…君はやはり無意識に私を求めて…」
「いませんッ!」
オスカーはリヒャルトの手の甲を渾身の力で抓る。
「イテテテテッ‼︎」
リヒャルトの悶絶など毛筋ほども気にせず、頭を抱える。
「…ああ…どうやら私は頭痛の種を増やしただけのようですね…」
リヒャルトは肩をすくめる。
「冗談だよ。君を揶揄うと実に面白いな」
オスカーは冷たい眼差しでリヒャルトを睨みつける。

「…で?私に頼みとは?」
オスカーは渋々切り出す。
なにしろこれを依頼できるのは、不本意ながら彼をおいていないからだ。
「…はい。…実は、その翡翠湖へのピクニックにドクターにもご同行いただきたいのです」
「私に?」
リヒャルトは眉を撥ね上げる。
「…はい。アルフレッド様は、翡翠湖にもう何年もいらしていません。近づいたくらいで体調不良になられるとは思いませんが…万が一のことが起こったら、私1人ではどうにもなりません。アルフレッド様のご体調を良くご存知なドクターにぜひ付き添っていただきたいのです」
…アルフレッドだけならなんとかなるかもしれないが、天敵の仲のフレデリックも連れて行き、半日過ごさなければならない。
…考えただけでも頭の中に暗雲が垂れ込めるオスカーだったのだ。
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