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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
フレデリックは林を抜け、湖の岸辺に向かい走り続ける。
「…フレデリック様!フレデリック様!お待ち下さい!」
後ろから美貌の執事、オスカーが追いかけてくる。
けれど、フレデリックは振り返らずに走り続ける。
「お待ち下さい!…そんなに走られましたら危のうございます!」

やりきれない思いがフレデリックの脚を前へ前へと突き動かす。
…上級生に、父に、母に…!
空はこんなにも晴れているのに…
自分の居場所はどこにもないような、孤独感に包まれる。
…ついに息が切れて、湖の畔でフレデリックの脚が止まる。
オスカーが、漸く追いつく。
「…フレデリック様…」
近づこうとするオスカーに声を上げる。
「…来ないでよ!」
オスカーの脚が止まる。
「…顔、見ないでよ…」
オスカーは察して、穏やかに声をかける。
「…はい。これ以上、お側には参りません。ご安心下さい」

フレデリックが岸辺に座り込む。
暫くして、ぽつりと弱々しい声が聞こえる。
「…彼は聖歌隊の上級生で…たまに一言二言話すくらいの仲だった…」
イートン校で心中騒ぎを起こした上級生の話だとオスカーは察した。
「…はい…」
「…だから、僕のことをそんな風に思っているなんて…思いもよらなかったんだ…」
「…はい…」
フレデリックの声はいつもの高飛車な調子の欠片もなかった。
弱々しい…傷つきやすい少年の声だった。
「…彼はとても物静かで成績優秀な優等生で…感情的になったところなんか見た事がなかった…だから…」

…フレデリックはあの日、上級生に礼拝堂に呼び出された。
上級生は思いつめたような顔をして、フレデリックの手を取るなり、思いの丈を告白してきた。
「僕は君を愛している。毎日毎日、君の事ばかり考えているんだ…。…だけど、君は上級生の人気者で…沢山の生徒と親しくしている。…君が他の生徒に笑いかけているのを見るだけで、嫉妬に気が狂いそうになるんだ。お願いだ。僕のことをどう思っているのか教えてくれ」

「…自分で言うのもおかしいけれど、僕は上級生には人気者のアイドルだった。…僕に思いを寄せて、告白してくる生徒なんて日常茶飯事だった。…だから、僕は彼もそんな一人だろうと高を括っていたんだ」
…フレデリックは真剣な表情で自分を見つめる上級生を一笑に付し、冷たく言い放った。
「…悪いけれど、僕は貴方のことを何とも思っていないから」
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