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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
フレデリックの輝くようなブロンドの髪が風に優しく靡く。
過去を思い出すようにぽつりぽつりと話し出す。
「…あの日の朝…母から、父との離婚が成立しそうだと言う電報が来て…僕はむしゃくしゃしていた。…そんな時に、愛しているだの、どう思っているだの一方的に暑苦しい思いを押し付けられて…腹立たしかったんだ」
…「どいてよ」
押しのけて礼拝堂を出て行こうとするフレデリックに、上級生は必死の眼差しで腕を掴んだ。
…「放せよ。…僕は同性愛者じゃない。迷惑なんだ。二度と近づくな。…近づいたら、君がホモセクシャルで僕に迫ったって、校長に告発する。…君の将来はお終いだよ」
情け容赦なく冷たく言い捨てる。
眼鏡の奥に絶望の色を浮かべる上級生を、フレデリックは、いい気味だと溜飲を下げながら、礼拝堂を後にしようとした。
…フレデリックが数歩、歩き出した時、背後から絶叫に近い声が響いた。
振り返るフレデリックの目に飛び込んだのは…
…小さなナイフを自分の首に向ける上級生の震える姿だった。
「…君に嫌われたら…僕は生きていたって仕方がない…ごめんね…迷惑かけて…」
消え入りそうな声で詫びながら、彼はナイフを自分の喉元に突きつけようとした。
フレデリックは全力で上級生に駆け寄り、ナイフごと彼の手を掴んだ。
「馬鹿な真似は止めろ‼︎」
フレデリックの手を離そうと上級生が抵抗し、揉み合いになる。
「そこで何をしている⁈」
騒ぎを聞きつけた舎監が飛び込んできた。
はっと気がつくと、揉み合った拍子に掠ったのかフレデリックの掌から血が流れていた。
上級生がそれを見て、半狂乱で叫びながら蹲る。
「…結局、その現場を見た舎監の証言で、彼が僕を道連れに無理心中しようとしたということになってしまったんだ。…僕は何回も否定したんだけど…肝心の彼が…」
…「フレデリック・エルギンにナイフを向けたのは僕です」と供述してしまったのだ。
「…有数のホテル王の父親が莫大な金を払い、事件は揉み消された。彼は退学…僕は…僕が学校に残ってこの件を吹聴したらと危惧した彼の母親が、息子は僕に誘惑されたのだと校長に訴えて、呆気なく放校処分さ。…元々素行も良くなかったから、学校としてはこれ幸いとお払い箱にしたってわけ。…僕の家が破産寸前なのも影響したんだろうな」
「…そんな…」
オスカーは思わず、声を上げた。
過去を思い出すようにぽつりぽつりと話し出す。
「…あの日の朝…母から、父との離婚が成立しそうだと言う電報が来て…僕はむしゃくしゃしていた。…そんな時に、愛しているだの、どう思っているだの一方的に暑苦しい思いを押し付けられて…腹立たしかったんだ」
…「どいてよ」
押しのけて礼拝堂を出て行こうとするフレデリックに、上級生は必死の眼差しで腕を掴んだ。
…「放せよ。…僕は同性愛者じゃない。迷惑なんだ。二度と近づくな。…近づいたら、君がホモセクシャルで僕に迫ったって、校長に告発する。…君の将来はお終いだよ」
情け容赦なく冷たく言い捨てる。
眼鏡の奥に絶望の色を浮かべる上級生を、フレデリックは、いい気味だと溜飲を下げながら、礼拝堂を後にしようとした。
…フレデリックが数歩、歩き出した時、背後から絶叫に近い声が響いた。
振り返るフレデリックの目に飛び込んだのは…
…小さなナイフを自分の首に向ける上級生の震える姿だった。
「…君に嫌われたら…僕は生きていたって仕方がない…ごめんね…迷惑かけて…」
消え入りそうな声で詫びながら、彼はナイフを自分の喉元に突きつけようとした。
フレデリックは全力で上級生に駆け寄り、ナイフごと彼の手を掴んだ。
「馬鹿な真似は止めろ‼︎」
フレデリックの手を離そうと上級生が抵抗し、揉み合いになる。
「そこで何をしている⁈」
騒ぎを聞きつけた舎監が飛び込んできた。
はっと気がつくと、揉み合った拍子に掠ったのかフレデリックの掌から血が流れていた。
上級生がそれを見て、半狂乱で叫びながら蹲る。
「…結局、その現場を見た舎監の証言で、彼が僕を道連れに無理心中しようとしたということになってしまったんだ。…僕は何回も否定したんだけど…肝心の彼が…」
…「フレデリック・エルギンにナイフを向けたのは僕です」と供述してしまったのだ。
「…有数のホテル王の父親が莫大な金を払い、事件は揉み消された。彼は退学…僕は…僕が学校に残ってこの件を吹聴したらと危惧した彼の母親が、息子は僕に誘惑されたのだと校長に訴えて、呆気なく放校処分さ。…元々素行も良くなかったから、学校としてはこれ幸いとお払い箱にしたってわけ。…僕の家が破産寸前なのも影響したんだろうな」
「…そんな…」
オスカーは思わず、声を上げた。