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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
「なっ…何を馬鹿な…。君は綺麗なのに頭がイカれているのか?…今の話を聞いて、どうして僕が…」
動揺するフレデリックを優しい兄のような眼差しで見つめながらオスカーは口を開く。
「…貴方は彼が気になっていたのです。…恐らくは以前から…。そして、貴方のことを熱い眼差しで見つめる彼を鬱陶しく思いながらも次第に惹かれていったのです。
…その気持ちが恋だったかどうかは私には分かりません。…そんなことは瑣末なことです。貴方は密かに想っていた上級生に告白され、狼狽えた。…貴方は気は強いが実はとても恥ずかしがり屋です。…告白された事実にどうすれば良いのかわからず、冷たい言葉を投げかけその場から立ち去ろうした。そして彼が自暴自棄になり、自殺しようとした…」
フレデリックはオスカーを睨みつけた。
「…君の妄想は大したものだな。…だとしても、どうしてそれが僕が彼を好きだということになるんだ?」
「…貴方が危険を顧みずに彼を止めたからです」
「…⁈」
「…本当に嫌いな相手だったら、その場を立ち去ったはずです。わざわざ危険な思いまでしてナイフを取り上げようとはしないでしょう。…ましてや貴方のご性格なら…」
オスカーの碧の瞳が包み込むように固唾を飲んで立ち竦むフレデリックを見つめる。
「…貴方は彼に傷ついて欲しくなかったのです。…貴方にとって大切な人だったから…。…貴方はとても優しい方だ…」
震える声で、反撃する。
「…バ、バカバカしくて話にならないな。僕はあんなヤツ、好きでもなんでもない。…あんな…あんな身勝手で、暗くて、クソ真面目で、だけど突拍子もなくて…全く!何を考えているんだか!なんで…なんで自殺しようなんて…!お陰で僕は大迷惑だよ。…あんな…あんなヤツ!」
…彼の綺麗なラテン語…
…彼の綺麗な歌声…
心がささくれた時、密かに礼拝堂の片隅から聴いていた…。
…心地の良い子守唄のような声だった…。

フレデリックの目の前の草原が霞み出す。
…そんな馬鹿な…
なんで彼のことなんかで涙が出るんだ…
あんなヤツ…
あんな迷惑なヤツのために…
流す涙なんかあるはずがないのに…

オスカーの慈愛に満ちた声が続く。
「…僭越ながら申し上げます。…彼を許すことで貴方のお心は楽になるはずです。…そして彼自身も…。貴方も彼もまだお若い。お二人の目の前には、輝かしい未来が広がっているのですから…」
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