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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
オスカーの穏やかな言葉を丸めて捨てるように、フレデリックは鼻先で笑った。
「…何が言いたいんだ?…僕にあいつと和解しろとでも?…」
「…フレデリック様、そうではありません。…私は…」
取りなそうとするオスカーに、フレデリックは苛々と叫んだ。
「うるさい!一々お節介を焼くな!…なんだよ、親切ぶって…。
…そんなこと言ったって、どうせ君はアルフレッドが一番可愛いんだろう?僕のことなんか、たまたま滞在している女主人の我儘な来客くらいにしか思ってない癖に…!僕のことなんか…僕のことなんか…本当はどうでもいい癖に!…心配する振りなんかするな…!」
そう言い捨てると、湖岸に向って真っ直ぐに駆け出した。
オスカーが慌てて後を追う。
「…お待ちください!フレデリック様!」
フレデリックが一度立ち止まり、振り返る。
アイスブルーの瞳でオスカーを睨みつけ
「うるさい!付いてくるな!もう放っておいてくれ!」
と言い放ち、再び走り出す。

フレデリックが逃げた先の湖岸には、石灰岩でできた大きな岩場があった。
一枚岩の巨大な岩でまるで切り立った崖のようになっている所だ。
フレデリックは瞬く間に岩に登りだし、岩壁を伝って遠くに逃げようとしていた。

オスカーがはっと眼鏡の奥の瞳を見開いた。
「フレデリック様!いけません!その岩は崩れやすくなっているのです!お戻りください!」

フレデリックはオスカーの切迫した叫び声にも耳を貸そうとはしない。
足場の悪い岩に脚をかけ、とにかく上へ上へと登っていった。
「うるさいうるさい!みんなうるさい!…どうせ…どうせ和解なんかしたって…どうせ僕は…!」
焦る気持ちが身体に出る。
掴もうとした岩肌が思いの外脆く、ビスケットのようにぽろぽろと崩れ、フレデリックの手は空を掴んだ。
焦って踏みしめた足場は、運が悪いことに昨夜の雨でしっとりと湿り、フレデリックの上質な革靴では何の歯止めにもならなかった。
「…ああっ‼︎」
フレデリックが叫んだ時には、彼の身体はそのまま人形のように垂直に湖の中へと落ちていった。

派手な水飛沫の音と同時にオスカーが叫ぶ。
「フレデリック様…‼︎」
オスカーはフレデリックが沈んでいった場所を素早く確認すると黒い上着だけ脱ぎ捨て、目も止まらぬ早さで濃い碧のベールを湛える湖の水面へと飛び込んで行った。
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