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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第2章 お茶会狂想曲
フレデリックはずぶ濡れの自分にしがみつき、おいおいと泣き出したアルフレッドにたじろぐ。
「…お、おい…」
「…よかった…君が生きていてよかった…」
自分が濡れるのも構わず、アルフレッドはフレデリックに抱きついたまま離れない。
「…お父様やお母様みたいに…君が死ななくて…よかった…」
フレデリックははっと眼を見張り、アルフレッドをまじまじと見つめた。
そして、ふっと表情を和らげて一瞬だけアルフレッドの背中を強く抱きしめた。
だが、その後すぐに
「…鼻水を擦りつけるなよ、bebeちゃん」
と、いつものようににやりと底意地悪く笑ったのだった。

少し離れた場所でオスカーは二人を見つめ、嬉しそうに笑う。
ふわりと肩に暖かい感触が伝わった。
ふと見ると、リヒャルトが自分の上着を脱いでオスカーの肩に大切そうに掛けている。
「…君は泳ぎが得意なんだな」
オスカーは微笑んだ。
眼鏡がないせいで、碧色の瞳が色鮮やかにリヒャルトに迫ってきた。
「湖水地方の出身ですから…。湖での泳ぎは慣れているのです」
「…だが生きた心地がしなかったよ…オスカー。君も無事で本当に良かった…」
リヒャルトが珍しく真剣な眼差しでオスカーを見つめる。
「…ドクター…」
…が、その先の言葉はオスカーの大きなくしゃみに遮られた。

アルフレッドが振り返り叫んだ。
「大変!オスカーが風邪を引いちゃう!フレデリックも!早く着替えなきゃ!」
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