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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第3章 ドクター・アーレンベルグの恋

「セシリアのことを悪く言うな!」
リヒャルトは唇の端に底意地の悪い笑みを浮かべる。
アンドレアの両手首を壁に押し付ける。
「…ふん。…平凡な女を平凡と言って何が悪い。
君はこんなにも美しく、魅力的なのに…あんな至極平均的な、夜会に行けば名前と顔を一致させるのが難しいような特徴のない娘と結婚し、子供を作り、孫に囲まれて回顧録を書いて老いてゆくのか?」
美しい空色の瞳が憤りできらきら輝く。
「うるさい!君に…君に…何が分かるんだ‼︎」
アンドレアがリヒャルトを睨みつける。
リヒャルトはうっとりとした優しい口調で語り始める。
「…美しい瞳だ…。君の瞳を幾度も夢に見た…この澄んだ優しい空色の瞳を…」
リヒャルトの手がアンドレアの形の良い顎に掛かる。
「…君の肖像画を何枚も描いたね…。何枚描いても、君の美しさを表現することは難しくて…、私は途方に暮れた…。
そんな私に君は、いつも優しく笑ってくれた…。
…リチャード、私は君の絵が一番好きだよ…と」
アンドレアが堪らないように感情を爆発させる。
貴公子然とした気品も優雅さも分別も全てをかなぐり捨てた剥き出しの裸の彼自身の言葉だ。
「うるさい!うるさい!うるさい!…思い出させるな!思い出してどうなると言うんだ!
…あの頃の二人に戻れるとでも言うのか⁈戻ってどうするんだ⁈ずっとパリで暮らす⁈
…君の実家は裕福な貴族だ。
…だが私は…!…家名だけの負債だらけの家…!経済観念のない見栄っ張りの両親!まだ幼い弟と妹はいる!パブリックスクールは金がかかる!妹は何れ社交界デビューをさせなくてはならない!
…金がいるんだ!幾らあっても足りないくらいに!だから私は弁護士の資格を取った!…仕事で知りあったハニーチャーチ男爵はうさんくさい成金貴族だが、私を至極気に入ってくれた。娘と結婚して欲しいと言われた。
…まあ、私の美貌と名門チェンバレン家の家名目的だろうがね!
…だがセシリアは莫大な持参金を持って嫁いでくれるのだ!…弟や妹に相応しい教育をしてやれる…手放したカントリーハウスも買い戻せるかも知れない…それらに魅力を感じて、靡いて、何が悪い⁉︎
放蕩三昧で甘やかされて好き勝手に生きている君にあれこれ言われる筋合いはない!私は私の護るべきものがあるんだ!知りもしないで…私の苦しみも知らないで!…今更のこのこと現れて…私をかき乱さないでくれ‼︎」
リヒャルトは唇の端に底意地の悪い笑みを浮かべる。
アンドレアの両手首を壁に押し付ける。
「…ふん。…平凡な女を平凡と言って何が悪い。
君はこんなにも美しく、魅力的なのに…あんな至極平均的な、夜会に行けば名前と顔を一致させるのが難しいような特徴のない娘と結婚し、子供を作り、孫に囲まれて回顧録を書いて老いてゆくのか?」
美しい空色の瞳が憤りできらきら輝く。
「うるさい!君に…君に…何が分かるんだ‼︎」
アンドレアがリヒャルトを睨みつける。
リヒャルトはうっとりとした優しい口調で語り始める。
「…美しい瞳だ…。君の瞳を幾度も夢に見た…この澄んだ優しい空色の瞳を…」
リヒャルトの手がアンドレアの形の良い顎に掛かる。
「…君の肖像画を何枚も描いたね…。何枚描いても、君の美しさを表現することは難しくて…、私は途方に暮れた…。
そんな私に君は、いつも優しく笑ってくれた…。
…リチャード、私は君の絵が一番好きだよ…と」
アンドレアが堪らないように感情を爆発させる。
貴公子然とした気品も優雅さも分別も全てをかなぐり捨てた剥き出しの裸の彼自身の言葉だ。
「うるさい!うるさい!うるさい!…思い出させるな!思い出してどうなると言うんだ!
…あの頃の二人に戻れるとでも言うのか⁈戻ってどうするんだ⁈ずっとパリで暮らす⁈
…君の実家は裕福な貴族だ。
…だが私は…!…家名だけの負債だらけの家…!経済観念のない見栄っ張りの両親!まだ幼い弟と妹はいる!パブリックスクールは金がかかる!妹は何れ社交界デビューをさせなくてはならない!
…金がいるんだ!幾らあっても足りないくらいに!だから私は弁護士の資格を取った!…仕事で知りあったハニーチャーチ男爵はうさんくさい成金貴族だが、私を至極気に入ってくれた。娘と結婚して欲しいと言われた。
…まあ、私の美貌と名門チェンバレン家の家名目的だろうがね!
…だがセシリアは莫大な持参金を持って嫁いでくれるのだ!…弟や妹に相応しい教育をしてやれる…手放したカントリーハウスも買い戻せるかも知れない…それらに魅力を感じて、靡いて、何が悪い⁉︎
放蕩三昧で甘やかされて好き勝手に生きている君にあれこれ言われる筋合いはない!私は私の護るべきものがあるんだ!知りもしないで…私の苦しみも知らないで!…今更のこのこと現れて…私をかき乱さないでくれ‼︎」

