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坊ちゃまと執事 〜或いはキャンディボンボンの日々〜
第3章 ドクター・アーレンベルグの恋
「アンドレア‼︎」
堪らずに抱き寄せる。
…美しいアンドレア…
パリで出逢った奇跡のような美しい青年…
そして、奇跡のような恋…。
耽美と退廃の街、パリで激しく愛しあった。

だが、別れは突然にやってきた。
アンドレアの父親が倒れ、跡目を継がなくてはならなくなった。
アンドレアの家は由緒正しき公爵家だった。

「行くな、アンドレア…。私は君を愛している」
離れたくないと抱きすくめるリヒャルトをアンドレアは突き放した。
「…愛していても…どうしようもないことはある…。
私は恋だけに溺れる訳にはいかないんだ…。
幼い弟や妹をきちんと成長させる責務がある」
「…どこか遠くに行こう…。二人だけの世界だ…誰にも邪魔されない…」
リヒャルトは自分の腕の中に愛しい恋人を閉じ込める。
アンドレアはするりとその腕から逃げ出した。
「だから君は夢見がちなお坊ちゃまと言われるのだ。
…二人だけの世界など存在するわけがない…。あったとしても僕は行けない…。現実を捨て去るわけにはいかない…」
俯いたアンドレアの床に透明な滴が滴り落ちた。

見事なブロンドを翻し、アンドレアはドアを開けた。
涙に濡れた貌は見せなかった。
「…さよなら、リチャード。…僕の青春の恋人…」
その言葉だけを残して、彼は去っていったのだった。
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