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蜜愛~男になった女~
第6章 第二部【こぼれ桜】 其の三 散る桜、咲く桜
信頼が帰城したのは、その日の夕刻であった。信頼が頼母の屋敷に赴いている間中、おさとの方は部屋に籠もり、マリア観音に祈りを捧げていた。ともすれば嫌な想像が頭を駆け巡ったけれど、懸命に追い払い、心を無にして、ただひたすら祈り続けた。
聡一郎と呼ばれた時代から、信頼の存在無くしての自分なぞ考えられなかった。お美代が昼餉の膳を運んできても、返事もしない。お美代は懸命に祈るおさとの方の姿を黙って見つめ、敢えて声を掛けようとはしなかった。
聡一郎と呼ばれた時代から、信頼の存在無くしての自分なぞ考えられなかった。お美代が昼餉の膳を運んできても、返事もしない。お美代は懸命に祈るおさとの方の姿を黙って見つめ、敢えて声を掛けようとはしなかった。