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蜜愛~男になった女~
第10章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 壱―お千世
当人同士が幼い頃に親たちが勝手に定めた縁談ではあったが、お千世は雄次郎に淡い好意を抱いていたし、雄次郎もお千世を憎からず思っているようであった。もっとも、お千世の雄次郎への想いは、あくまでも兄に対するような類のほのかなものである。
半年前、お千世は結婚前の行儀見習いを兼ねて城に上がった。相応の武家の娘が結婚前に花嫁修業の一環として奉公に出るのはよくあることで、格別に珍しいわけではない。