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蜜愛~男になった女~
第11章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 弐―加恵
現(うつつ)の桜が散っても、幻の桜は散らない。お千世はずっと憑かれたように桜を見つめていたかと思うと、時折ふと思い出した風に振り返り、背後に控える加恵に訊ねる。
「殿は今夜はおいでになるかしら」
加恵が曖昧に微笑したままでいても、お千世は特に訝しむわけでもなく、うっすらと笑う。
「多分、今夜は必ずおいでになるわ」
自らに言い聞かせるように呟くと、また、縁に座って桜を眺め始める。