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蜜愛~男になった女~
第11章 番外編【櫻の系譜・弐~水面の月-高嶺桜-】 弐―加恵
お千世は完全に狂っているというわけではなく、時折正気に返ることもあったようだった。
ある夜、庭を眺めていたお千世が突然立ち上がった。既に五月の半ばで、日中は初夏のような気候で、うっすらと汗ばむほどの陽気であったが、流石に夜ともなれば、夜気には涼しさが混じる。
それでも、お千世は気にする風もなく障子を開け放して庭を見ていた。月の美しい夜であった。花のない桜の樹を満月が照らしている。ふいにお千世が呟いた。
ある夜、庭を眺めていたお千世が突然立ち上がった。既に五月の半ばで、日中は初夏のような気候で、うっすらと汗ばむほどの陽気であったが、流石に夜ともなれば、夜気には涼しさが混じる。
それでも、お千世は気にする風もなく障子を開け放して庭を見ていた。月の美しい夜であった。花のない桜の樹を満月が照らしている。ふいにお千世が呟いた。