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凍てつく湖
第3章 告白と回想
えっと、、そう一転します。あれは年末を迎えようとしていた寒い冬の日の事でした。
田崎という男が入社してきたんです。
年齢は私とさして変わらないでしょう。
田崎は大手から引き抜かれた一流の印刷工でした。当時はね、詳しくは省きますけど、印刷というのそれなりに技術を必要としていたんです。田崎の腕は確かに一流でした。そしていきなりの班長待遇。体格が良くてねぇ、なんだか意地の悪そうな顔というよりは人相をしていて、私は少し嫌な予感がしたんです。
そして予想通りというか、、私は早々に目を付けられました。三日もすれば罵倒され、蹴飛ばされ、そして殴られました。今では到底考えられない事ですが事実なんですよ。
一人の男の出現で小さな会社の雰囲気などあっという間に変わってしまいます。
実の所、私はこんな事には馴れっ子でした。ガキの頃からこんな感じでしてね。またか、と思っていたんです。
ただ、大人のそれは想像以上にえげつなくて、、ミスをしては金を取られ殴られ、仕事が終われば無理矢理に強い酒を飲まされてね、おまけに最後は勘定を払えと来たもんだ。
私はね、大いに苦しみましたよ。
でも、それ以上にショックだったのが、仲間だと思っていた回りの連中は一切見て見ぬ振りでした。
そうです。所詮は馴れ合いに過ぎなかったんですよね。私に仲間など一人もいませんでした。
一方で会社の売り上げは右肩上がりとなれば、社長に直訴したところで、どっちを取るかなんて聞くまでもなく、辞めたところで行くアテもなければ帰る場所もない。
だから私はただひたすらに、ひたすらに耐えるしかありません。
でも、それもいよいよ限界に来てました。
そうなるとね、私の中でふつふつと生まれ来たんですよ。
そう、殺意。うん。間違いなく殺意ですよね。
うん。ただ、不思議とね、自殺だけは考えなかったです。
それは時代、、ですかねぇ、、