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眩惑のディナーショー
第16章 花魁道中
「あらまあっ! アサドの旦那様っお早いお着きで」
上客の到着に気付いたお多江が玄関か一目散に駆けてきて、菖蒲を隠すようにアサドから奪った。
「早く足をお隠しっ…だから言わんこっちゃないんだよほんとにっ…」
菖蒲を小声で叱りながらお多江はアサドに愛想笑いを返してご機嫌取りを繰り返す。
「ささ、九重はもう準備を済ませてありますからどうぞこちらへ──…」
「ああ、じゃあ宜しく頼む」
お多江に奥の間へ案内されてアサドはそのまま足を運んだ。
「あの九重姉さんご贔屓の旦那様ってすっごいお金持ちなんだって」
お多江と上客の後ろ姿を見送りながら、菖蒲が捕った出目金を桶に入れて貰った禿が隣でそう口を開く。
「お金持ち? へえ…旅籠屋の正松さんよりも?」
「比べ物にならないくらいのお金持ちらしいよ」
「比べ物にならない?そうなんだ…」
菖蒲はあまり興味無さげに応えていた。
お多江に叱られた着物の服装を直しながら、菖蒲は茶魅泉宿に戻る。
草履を脱いで上に上がるとお多江が摺り足で長い廊下を走ってきていた。
上客の到着に気付いたお多江が玄関か一目散に駆けてきて、菖蒲を隠すようにアサドから奪った。
「早く足をお隠しっ…だから言わんこっちゃないんだよほんとにっ…」
菖蒲を小声で叱りながらお多江はアサドに愛想笑いを返してご機嫌取りを繰り返す。
「ささ、九重はもう準備を済ませてありますからどうぞこちらへ──…」
「ああ、じゃあ宜しく頼む」
お多江に奥の間へ案内されてアサドはそのまま足を運んだ。
「あの九重姉さんご贔屓の旦那様ってすっごいお金持ちなんだって」
お多江と上客の後ろ姿を見送りながら、菖蒲が捕った出目金を桶に入れて貰った禿が隣でそう口を開く。
「お金持ち? へえ…旅籠屋の正松さんよりも?」
「比べ物にならないくらいのお金持ちらしいよ」
「比べ物にならない?そうなんだ…」
菖蒲はあまり興味無さげに応えていた。
お多江に叱られた着物の服装を直しながら、菖蒲は茶魅泉宿に戻る。
草履を脱いで上に上がるとお多江が摺り足で長い廊下を走ってきていた。