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眩惑のディナーショー
第16章 花魁道中
アサドの醸し出す妖しい雰囲気に菖蒲は思わず腰を上げた。
「やだっ──…」
背を向け逃げ出そうとした菖蒲の両手首をアサドは容易く片腕で掴んで捕える。
「俺は元軍人だからな…暴れる捕虜を捕えなれてる…」
背後から羽交い締めにされて腰の位置で両手を縛られる。
後頭部から耳元で囁く低い声に“お前は俺には敵わない”そう諭されているかのようで菖蒲の躰からは不意に力が抜けていった。
「それでいい……むやみに抵抗すれば肌に傷がつく──」
「───……」
「九重には傷も痛みも与えるなと口酸っぱく言われてるからな…」
クスリと笑ながら声にする息が首筋に掛かる。
どうしていいかも解らず戸惑う菖蒲の縛った両手首を掴んだまま、アサドは隣の板間の部屋へ連れていった──
黒く漆塗りで艶を出した板間の床が四隅に灯された赤い蝋燭の火を妖しげに反射させる。
幼い時から過した宿だったが、菖蒲が目にしたそこは初めて観る世界だった。
天井から剥き出した太い柱から縄に括られた丸太が横向きに吊るされている──
アサドは手首から垂れ下がる襷の紐の両端を菖蒲の腰に巻き付けると、余った紐の先をその丸太に引っ掛けグッと力を入れて引っ張った。
「やだっ──…」
背を向け逃げ出そうとした菖蒲の両手首をアサドは容易く片腕で掴んで捕える。
「俺は元軍人だからな…暴れる捕虜を捕えなれてる…」
背後から羽交い締めにされて腰の位置で両手を縛られる。
後頭部から耳元で囁く低い声に“お前は俺には敵わない”そう諭されているかのようで菖蒲の躰からは不意に力が抜けていった。
「それでいい……むやみに抵抗すれば肌に傷がつく──」
「───……」
「九重には傷も痛みも与えるなと口酸っぱく言われてるからな…」
クスリと笑ながら声にする息が首筋に掛かる。
どうしていいかも解らず戸惑う菖蒲の縛った両手首を掴んだまま、アサドは隣の板間の部屋へ連れていった──
黒く漆塗りで艶を出した板間の床が四隅に灯された赤い蝋燭の火を妖しげに反射させる。
幼い時から過した宿だったが、菖蒲が目にしたそこは初めて観る世界だった。
天井から剥き出した太い柱から縄に括られた丸太が横向きに吊るされている──
アサドは手首から垂れ下がる襷の紐の両端を菖蒲の腰に巻き付けると、余った紐の先をその丸太に引っ掛けグッと力を入れて引っ張った。