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眩惑のディナーショー
第16章 花魁道中
「菖蒲……」
「は、い…」
耳元で囁くアサドに菖蒲は顔を背けたまま、素直に返事をした。
「もう合格だがどうする……」
「えっ…」
アサドの問いに、菖蒲は咄嗟に顔を上げた。
「合…格…っ…」
「ああ、合格だ。」
「………それは、どういう……」
戸惑う菖蒲をアサドはくすりと笑う。
そして軽くため息を吐いていた。
「男を誘う表情も……」
「………」
「欲しがる仕草も──」
「………」
「遊廓の女として充分だ……」
「……っ…」
「生娘のままでその腕があれば上客を虜にできる…」
「あ……っ…」
腫れて熱く波打つ肉の筒から長い指が抜かれていく──
菖蒲は切ない声を漏らし顔を辛そうに歪めた。
「あ、アサド様っ…」
「自分の眼で選んでいい男を掴め…」
「そんな…」
すがるような瞳にアサドは無情にもその言葉だけを告げて背を向けた。
板間の部屋を出て、手前の襖を閉めるとアサドの出ていく足音がどんどんと遠ざかる──
手を伸ばしたくても捕縛された躰は言うことを聞かず、紐を軋ませてただ悲し気に揺れ動くだけだった。