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神様のいない世界
第10章 事件
「お前の育ての親からなら話を聞くか?」

「会わせてくれるの?」

「状況次第ではな?」


状況とは何なのだろうと思う和隠だったが、小さく頷いた。

どんな形であれ、家族に会えるのは嬉しい。

その反面、捨てられた事実をどう捉えて会えばいいのかと言う不安もある。


和隠は宗高の上着の裾を掴みながら胸に頭をつけ、宗高はそんな和隠の不安を悟る様に、その頭を包み込んだ。


「現実はいつかは受け入れなければならない問題だ」

「うん」


和隠は宗高の言い分はわかっている。
いくら逃げたとしても事実は変わらないのだから、いつかは向き合わなければならない。

でも、それはまだ今じゃなくてもいいんじゃないのかと。


その瞬間、宗高は和隠を突き放し叫んだ。


「善!!後ろ!!」


見上げた善の後ろから、真夏に似つかわしくない黒の長袖とキャップを目深に被った人物が駆け寄って来ていて、宗高の声に見上げた善にぶつかったのだ。
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