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神様のいない世界
第10章 事件
「お嬢さんも連れて来たのか?」


そう言って和隠に笑顔を見せた。


「こいつはいいから善を頼む」


宗高は善を車椅子に座らせてそう言うと、押してマンションに入って行くので、和隠も急いでついて行った。

さっきまで不安でたまらなかった和隠だったが、高井戸の笑顔を見たら、安心したのだ。


マンションの一室に入ると、奥の部屋が診療所のようになっていて、そこには若い男性がいて、身体の大きい善を軽々と持ち上げて直ぐに診察台にうつ伏せに寝かされた。


「二人とも、手を洗って待ってなさい」


高井戸がそう言うと扉を閉められ、和隠と宗高はシンクで手を洗った。


「はぁー」


大きなため息を吐いた宗高はソファに座りながら和隠を横目で睨んでいた。


「ごめんなさい」

「何がだ?」

「言うこと聞かずについて来ちゃって」

「分かってんならいい」


宗高はそう言って、自分の横の空いているソファーを叩いて和隠に座るように催促した。
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