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神様のいない世界
第10章 事件
それから暫くすると、ドアが開き高井戸が出て来た。


「どうぞ?」


中に入っていいと促され、和隠は宗高の後ろからついて行った。


「若頭、すみませんでした」


善は包帯を巻いた体でベットに座って頭を下げていた。不覚にも背中を刺され、数箇所斬り付けられたのだが、深手ではなく直ぐに動ける状態だった。


「あぁ、」


短い返事をする宗高の背中を掴んで覗き込むように和隠は善を見た。


「大丈夫?痛くない?」

「痛てぇに決まってんだろ!」


善は怒った口調で言ったが、眉尻の下がった情けない表情の和隠を見ると笑い出し、笑ったせいで傷口が痛み背中を抑えた。


「内臓に傷はなかったのが幸いだよ。全部で3箇所、合計24針縫っといたからね、いい筋肉のおかげだねぇ」


高井戸はそう笑い、カルテを書いていた。


「筋肉?脂肪じゃなくて?」


和隠は素直に疑問を口にすると、高井戸と宗高が笑い、善は和隠を睨んだ。


「これはなぁ、脂肪に見せかけた筋肉なんだよ!!」

「違うだろう、脂肪で筋肉を隠してたんだろう?」
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