この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マスター・ナオキの怪店日記
第13章 冥途の土産
「なんだかまどろっこしくてすみません」
申し訳なさそうに頭を擦る信一の顔は、信彦によく似ていた。
店に来たばかりの頃、信彦もこういう仕草をみせていたっけ、と尚樹の頭の中に信彦の顔が浮かび上がった。
少しの沈黙が二人を包む。その間に信一は、店の中をじっくりと眺めている。尚樹の背後の棚に並ぶ酒瓶へ、一つ一つ確かめるように視線を送る。マホガニーのカウンターに手を滑らせて、その感触を確かめている。最後に尚樹の顔に焦点を合わせ、穏やかに口角を上げ、静かに頭を下げた。
「父や母が言うように、ほんとうに素敵なバーですね。私も酒が飲めたなら、こういう居場所を確保してみたかったです・・あっ、そうだ、最後の最後に、お酒を飲んでみたいんですが、いいですか?」
良い事思いついたとばかりに急に表情が弾む信一。尚樹もそりゃいいと、店で一番高い酒を棚から取った。
「そうですよ、冥途の土産に是非」
なかなかうまいことを言う。そう自画自賛したのもつかの間、冗談ではないんだったと今度は自責の念に駆られる。
だが言われた当の本人は、その通りだと手を叩いて笑い転げた。
申し訳なさそうに頭を擦る信一の顔は、信彦によく似ていた。
店に来たばかりの頃、信彦もこういう仕草をみせていたっけ、と尚樹の頭の中に信彦の顔が浮かび上がった。
少しの沈黙が二人を包む。その間に信一は、店の中をじっくりと眺めている。尚樹の背後の棚に並ぶ酒瓶へ、一つ一つ確かめるように視線を送る。マホガニーのカウンターに手を滑らせて、その感触を確かめている。最後に尚樹の顔に焦点を合わせ、穏やかに口角を上げ、静かに頭を下げた。
「父や母が言うように、ほんとうに素敵なバーですね。私も酒が飲めたなら、こういう居場所を確保してみたかったです・・あっ、そうだ、最後の最後に、お酒を飲んでみたいんですが、いいですか?」
良い事思いついたとばかりに急に表情が弾む信一。尚樹もそりゃいいと、店で一番高い酒を棚から取った。
「そうですよ、冥途の土産に是非」
なかなかうまいことを言う。そう自画自賛したのもつかの間、冗談ではないんだったと今度は自責の念に駆られる。
だが言われた当の本人は、その通りだと手を叩いて笑い転げた。