この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マスター・ナオキの怪店日記
第3章 新天地を求めて
長澤信彦は、埼玉県で造園業を営んでいたというのだが、その風貌からするとちょっと驚いたというのが尚樹の印象だった。
植木屋さん、というと体格がよくてねじり鉢巻きが似合うというイメージを抱くのだが、信彦の見た目は瘦せ型で、ネクタイにスーツで仕事をしている雰囲気が強い。
驚きに目を見開いている尚樹に、親父の後を継いだのでと恥ずかしそうに首をさすって見せた。
「三代続いた植木屋なんで、絶やすのはもったいないし、なんといっても継ぐのが当然といった圧がすごかったんで。でも30までは好きな事をしていいっていうんで、鉄道会社で働きました」
「もしかして、鉄道ファンなんですか?」
「おっしゃる通り、鉄道マニアでした。あ、今では鉄道オタクっていうんですよね。私は電車に乗って旅をするのが好きでしてね。その旅先で出会ったのが妻なんです」
隣りに座る照美に送る視線のなんと柔らかいこと。愛情という感情が目に見える様だと、尚樹は目を細めた。