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マスター・ナオキの怪店日記
第8章 いよいよ始まった、ご来店・・
 あ、だけど、長澤夫妻にバーを紹介してほしいと言った元バーテンダーは、初めての霊の客のあの男だ。この人とは別人だと思う。ということは、バーテンの霊が複数いるってことなのか?
 もう一度顔をよく見てみよう、と尚樹が男の顔をまじまじと見ていると、
「あの元バーテンダーと私は別人だよ」と、こちらの心の中を読み取って先に応えてくれた。
 尚樹は急に恥ずかしくなった。すべてお見通しなのかと思うと、恥ずかしくなった。
「マスターも何か飲んで。飲まずにはいられないだろう?」
 またしても見通された。確かに飲まずにはいられない。酔いの力を借りないと・・
 ジムビームでハイボールを作る。さあ、どうにでもなれ、幽霊だろうが何だろうがかかってこい、と強がりながら男に向かってグラスを掲げてから一口含んだ。
「お客様の話、聞かせてください。どんなバーをやってらしたのか、どんなバーテンだったのか、知りたいです」
聞いて男は、うん、と肯いた。目じりに柔らかな皺をたたえて。




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