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マスター・ナオキの怪店日記
第10章 3人目の幽霊様
 この店の中で一番高いグラス、バカラのロックグラスに琥珀の液体を注ぎ、男の前に置く。カットの細かいグラスに光が反射して、まるでそこにミラーボールが置いてあるような輝きを放った。
「お客様もバーを愛していらしたんですね」
「ああ。バーはいいよ。酒が好き、というよりはバーが好きなんだ」
 そういうの、いいね、と尚樹は心の底から喜びが沸き上がるのを感じた。
 酒は、いろんな飲み方ができる。勢いづけるため、ただ酔いたいため、心底酒を味わうため。人それぞれの都合や事情だ。
 それとは違うのが、バーという場所だ。
 酒のためだけではなく、その場で交わす人との繋がり。その特別感を愛しているという客が、尚樹は何より好きだった。だから、この年老いた男のことをもう少し知りたいと思った。

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