この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マスター・ナオキの怪店日記
第13章 冥途の土産
客がまばらになってきた22時。帰っていく客と入れ違いになるようにして一人の男が入ってきた。
「いらっしゃい」
初めて見る顔だ。会社帰りのサラリーマンというスタイルではない。かといって同業者のようでもないし、クリエイティブな感じでもない。そう、休日のカジュアルスタイルというのが一番しっくりくるだろうか。
誰も座っていないカウンター席を勧めると、静かな笑みを浮かべてスツールに腰かけた。
男と面と向かった時、一瞬違和感があった。
もしかしたら、と予感が走ったが、店内には他の客もいるし、霊だったら今の時間にはまだ来ないはずだ。
初めての客を見ただけでもしかしたらと思うのは、もはや条件反射のようなものなのかと心の中で自分を笑った。
「お飲み物はなにになさいますか?」
おしぼりを手渡し男に注文を聞くと、
「実は私、酒が飲めないんですよ」と後頭部に手を当てながら恥ずかしそうにうつむいた。