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闇に蠢くツチノコ
第2章 幹事がいない同窓会
そんなどこか白けた雰囲気にカツが口火を切った。
「俺さ、この間ツチノコ見たんだよ」
( えっ、ここでぶっ込む?)
思わず僕は息を呑んだ。
「でっかいツチノコさ。まっ、ケイタが小学生の頃に見た伝説のツチノコには敵わないけどな!確かこれくらいの大きさだったんだよな?」
カツは両手で約1メートルの長さを創ると、ケイタはビールを一気に飲み干しカツを上目遣いで睨む。
「いや、そんなもんじゃない!確か、これぐらいだったよな!ケイタ?」
今度はシュンがウエルカム!のごとく両腕を目一杯広げて二メートル弱の長さを創ると、ケイタはハァ、、と、それは深いため息を落としグラスを置いた。
「空を飛んで逃げたという、あの伝説のツチノコ、だよね?」
最後に僕がお伺いを立てると、ケイタは不意に立ち上がった。
( まずい、、のかな?)
さぁ!どっち?
「バーカ!今まで黙っていたけどそんなんじゃないんだぜ!確か、そう!ゆうに十メートルはあったな!アヒャッ!ヒャッ!ヒャッ!」
それはそれは予想以上に弾ける。
「おいおい、、それじゃあ嘘になるぞ」
対照的にカツとシュンは薄ら笑い。ようは滑ってお寒い状況だ。
僕は僕で安堵した。この完全なる身内ネタはいつだって諸刃の剣で、ケイタの機嫌次第ではひと暴れになるからだ。
「はぁ?テメェで振っといて!ぶざけんじゃねぇよ!ってか!幹事の野郎!まだ来ねぇんか!!」
その瞬間、シュンが空のグラスをテーブルに叩きつけた。

ゴン!

「ケイタ!気持ちは分かる!分かるが、まだ続けるか?関ちゃんならもう来たくても来れないんだ。分かるよ?」
シュンは役者だけに即興の芝居は終わった、と言い切った。
「、、、、」


「.ちょっといい?」
タイミングを伺うように黒い衣装に身を包んだ女性が僕らに話しかけて来た。
「おビール全然足りないよね!いま用意するから待っててね!」
その女性は幹事のお母さんであり、、喪主だ。
「大丈夫です。それよりおばちゃん、さっきから好き勝手に騒いでごめんなさい」
カツは代表して詫びている。
そう、今夜は幹事、いや関ちゃんのお通夜なんだ。
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