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闇に蠢くツチノコ
第2章 幹事がいない同窓会
「いいのよ!その方がジュンイチも喜ぶから!ケイタくん!わざわざ仕事帰りにありがとね。全く!幹事はどこで油売ってるんだか!」
「い、いや、、俺は、、」
痛々しく笑うおばちゃんに僕らは完全に言葉を失くした。と、同時に僕は僕である些細な事を思い出していた。
生前、関ちゃんは僕にこう言ったんだ。
「ツチノコはいるよ」
とね。
「まっ、いいから。二人共座れよ。なっ?」
カツには珍しく優しい言葉で二人を諭した。
「ってか、ケイタは座る前にいい加減着替えろって。服あるんだろう?」
「あぁ、、」
現場から直行は仕方ないにせよ、余りにも場違い。
「ケイタくん、、ありがとうね」
関ちゃんの妹 莉奈ちゃんに促されたケイタは素直に隣部屋へと消えた。

「ったく、、変わらなぇな」
別に呆れている訳じゃない。二人がとても仲良しだったのは誰でも知っている。あれは小学校六年生の春。少しスカした都会からの転校生関ちゃんを仲間に引きづり込んだのも他ならぬケイタだ。
幹事こと、関ちゃんこと、関口純一は誰に告げる事もなく自殺した。
就職してまだ一ヵ月目の出来事だ。

カツとシュンは声を潜めて囁き合っていた。
「で、実際の原因はなんだ?」
「あくまでもネットの書き込みだが、、上司のパワハラって話だ」
「エリートほど打たれ弱い。または出る杭は打たれる、か」
「まだケイタには言うなよ。あいつ葬式に金属バット持参しかねないからな」
「、、いずれ分かるぞ」
「そん時はそん時だ。とにかく明日は関ちゃんを無事、、いや盛大に送ってやろうぜ。なっ!おい!リョウスケ、お前さっきからどうした?」
シュンが僕を覗き込む。
「大丈夫。分かっている。それよりケイタ遅いな」
「そうだな」
不謹慎なのは理解しているけど、僕はあの時の関ちゃんの発言が今更ながらに引っかかっていたんだ。いや違う、、引っかかり見事なまでにこの瞬間つまづいている。
「悪りぃ、ところで会費、いや、香典はどうすんだ?」
僕が振り返ると喪服姿のケイタは鼻声で目を真っ赤に晴らしてた。
「バーカ。それは明日だよ、明日、、にしてもさ、、」
今夜はお通夜だ。別に喪服でも構わないは構わないけど、、
「んだよ?」
「ったく!極端だよな」
カツが笑うと僕とシュンも釣られるように笑う。
まさに孫にも衣装。中々どうしてケイタは男前だ。
莉奈ちゃんが微笑みながらネクタイを直している。
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