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雪エルフのメイドはホムンクルス執事と
第2章 ホムンクルス執事の見る夢
1
事の起こりは何十年も百年も大昔に遡るのだという。

傷心のドワーフ少年が呼び出されて教会跡の基地に赴けば、「義兄」がフランケンシュタインになっていた。

「ご本人の要望でね。彼は功績も大きいから稟議書も通ったのですよ。使った資材やマテリアルも最高のもので腕を振るったし、何より「素体」が最高ですからねえ! ヒッヒ!」

この防衛拠点の名物らしい高名な魔術研究者である初老の司祭が不吉な笑顔で出迎えてくれた。これでも仲間としての複雑な心境とマッドサイエンティストの充足感が混ぜこぜになった表情で説明してくれる。
つまり、魔族と戦って戦死した義兄の遺体を「素材」にして、人工生命体の「ホムンクルス」に仕立てたものらしい。死霊術のゾンビなどに比べて、類似だが高級な技術ではあったけれども、倫理的事情もあるため事柄によっては禁忌や許可制になっている。

「ああ、アニキまで! こんなになっちまって!」

青い甲冑を着せられたホムンクルス兄貴の前で、少年は頭を抑えた。姉の不幸に加えて恋人の兄貴分までこんなになっては、頭が痛いどころではない。
そんな気持ちを知ってか知らずか、魔術科学者の司祭はどこかうきうきと誇らしげに説明続行。少年は「感謝すべき」と頭で理解しつつ、ハゲ頭を蹴り飛ばしてやりたい衝動に駆られた。

「いわゆる燃料式と蓄電式の動力で、通常は省エネでスリープ状態。主なパワーは地磁気の蓄積で、地面に着けた状態なら立ったり歩いているだけで少しずつはパワー回復する。地下室や穴に埋めておくとさらに早い。緊急時や急速起動時には燃料でも良し! スリープ状態でも居眠りうたた寝くらいの意識があって、周囲状況の認識や警戒は出来る親切設計」

「親切設計、じゃねええ!」

ついに激したドワーフ少年は、得々たる司祭博士の襟首を掴んで怒鳴りつけた。

「いや、だから。最高の最新技術の親切設計」

「そんなこと言ってるんじゃねえよ、ハゲっ! てめえの頭は髪の毛のついでに、頭ネジまでからっきし足りてねえのか! 普通は戦没者に敬意払うだろ? しかも身内の目の前で!」

話と感覚が噛み合っていない。それでも司祭博士は、ようやく察したらしい。

「でも彼は、人間だし。ドワーフの君とは血縁者でもなかったはずだが?」

「そうだよ! だけど、姉貴の婚約者みたいなもんで、義理の兄貴で友達なんだ」
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