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人生逆転した男
第2章 保険外交員 水瀬祐希
祐希『ありがとうございます。場所ですが、就業時間外になってしまうかと思いますので、近くの喫茶店でいかがでしょうか?』


退勤後、木原は会社近くの水瀬祐希が指定してきた喫茶店に入る。
現在17時45分で待ち合わせの時間にはまだ15分ある。
店内を見回したが彼女はまだ来ていないようだった。

木原は奥のテーブル席に座り、ホットコーヒーを注文した。

昨日彼女から受け取った保険プランの冊子を取り出す。

ほどなくしてホットコーヒーがきて一口すすった所で
例のコツコツと小気味いいヒールの音が近づいてくるのに気づいた。
木原が顔を上げるとニッコリと微笑む彼女と目が合う。

祐希「すみません。お待たせいたしました。」

ピッチリと身体のラインにあったスーツ姿で颯爽と水瀬祐希は現れた。

木原「今きたところなので大丈夫です」

祐希「遅い時間に申し訳ありません」

木原「いえすみません、こちらも急に電話してしまって」

お気になさらずと彼女は微笑みながら言った。
急に呼び出されるのは日常茶飯事なのだろうか。

彼女は同じものをと店員に注文すると、早速本題に入った。

祐希「色々とご検討いただきありがとうございます。それでご相談内容というのは?」

木原「いただいた3件の保険ですが、全部入ろうと思います」

祐希「3件ともですか、ありがとうございます」

気持ちのこもった口調で彼女は謝意を述べる。

木原「ただ、保障はもっと手厚くしたいと思っていまして」

祐希「承知しました。ご希望の条件はございますか?」

木原「今の20倍位にしたいなぁとは思ってるんですが」

20倍と聞いた瞬間、水瀬祐希の目の奥が一瞬光ったような気がした。

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